幼なじみプレイ
涙と猫と赤い傘

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バカとモテ男の夏休み

 俺はなんであんなやつのことが好きなんだろ。夏の眩しい陽射しに目を細めて、ぼんやりそんな馬鹿なことを考える。
 あいつのことを健気に思い続けてはや十年。この健気さってば、もはや国宝級だ。

 だからと言って誰も俺のことを褒めてはくれない。それどころか俺の本心をあいつやみんなに知られたら、きっと『キモい』だとか『きしょい』だとか言われるに決まってる。
 だから誰にも言わないつもりだし、誰かに相談をするなんて気もさらさらないんだけれど。

 ある晴れた朝。学校へと真っすぐ向かう一本道。
 世間は夏休みに突入したというのに、今日から夏休みの間中、休みなんか関係なく通学しなきゃいけないおバカな俺。

 なんと、一学期にほとんどの教科で赤点をもらってしまった。そのお陰で補習の時間割りが普通の授業と同じように、一日、びっしりと組まれてしまっている。
 同じくおバカなあいつに会わないかなあと、ちょっぴり期待しながら行く道を急ぐ。

「泉(いずみ)くーん。一緒に学校行こー」

 なんて、可愛くお互いを誘い合い、一緒に登校していたのは遥か昔のこと。今は遠くなってしまったあいつとは学校でもあまり話さなくて、悪戯に過ぎていく時間の残酷さを痛感していた。

 目の前に広がる空、一面にもくもくと入道雲。むしむしと堪らなく蒸し暑いこの気候から考えると、近いうちに雨が降り出すだろう。
 夏の天気は気まぐれに、あいつの気分のようにころころ変わる。

「……え。壱人(いちひと)。おまえ、あの娘とは付き合わないって言ってたじゃん」
「うん。気が変わった」

 よく見たら巨乳なんだよねと、へらへら笑ったあいつに脳天チョップを喰らわせたのは昨日のこと。

「……いったあ。なんだよ、泉。おまえ、あの娘のこと好きだったの?」
「ちげえよ!」

 そう言いつつ、とどめに飛び蹴りを喰らわせてくるりとあいつに背中を向けた。

(……くそっ。人の気も知らないで)


 初めてあいつ、壱人に会ったのは確か小学一年生の夏休みの初日で、そういや今からちょうど十年前の今日だ。

 俺の家の隣に新しく家が建ち、夏休みの初日に壱人が一家で越して来た。おじさんとおばさんに連れられた三人の可愛い女の子、

「まあまあ、可愛い。三姉妹なんですねえ」
「あ、いや。その、この子は……」
「あらごめんなさい。男の子なのね」

 その中で、おじさんとおばさんの後ろに隠れていたチビが壱人で、

「いやー、そちらこそ。可愛い姉妹で……」
「あ、いえ。うちのも……」
「えっ、男の子なんですか!」

 同じ女の子みたいだといっても俺は女顔なだけで、どこにでもいるような平凡な顔をしてるけど。ところが、当時の壱人は美少女って言葉がぴったりで、色も白くて当時は俺よりも小さくて。

 本当のこと言うと、完全に俺の一目惚れだった。

Bkm

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