涙と猫と赤い傘
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なんと言うか、あまりにも驚きすぎて開いた口が塞がらなかった。
つまりはなんだ。壱人は俺のことが好きで、だから俺と似た感じの女子と付き合ってきたと。
……あ、有り得ねえ。
確かに結木さんは背格好まで俺と同じぐらいだし、けど決定的に胸のボリュームが違うんだけど。
そう壱人に文句を言ったら、
「うん。それだけが不満だった。俺、貧乳の方が好きだから」
おどけたようにそう言いつつ、壱人は俺の服の中をまさぐってくる。
「……ちょ、ばっ。やっ、やめっ」「ごめん。無理」
つまりはなんだ。
壱人が俺のことを好きってことは、もしかして俺ら両思いだったのか?!
いやいやいや。有り得ねえってば。
だって俺ら男同士だし……、って。
もしかして壱人もそう思って、わざと俺を無視して心の葛藤をやり過ごしてたのか?
だから壱人は、俺に似た子と付き合って来たんだろうか。
俺とは付き合えるわけがないんだからと。
さっきまでの泣きたい気持ちはどこへやら。
全力で盛ってくる気まぐれ猫を必死で制しながら、ぐるぐるぐるぐる考える。
「……んっ、んんっ」
再びキス。
キス、キス、キスの、キスの嵐。
苦し紛れにシーツを掴んだら、指先にかちりと何かが当たる。
涙と気まぐれ猫と赤い傘。
いろいろありまくった今年の夏休みも残りわずか。
本当にいろいろあったけど、どうやら今年の夏は嬉しい夏になりそうだ。
ありがとうございました。
あとがき
2010/10/09/完結
Bkm
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