幼なじみプレイ
涙と猫と赤い傘

[17/25]
久しぶりの雨の前兆かどうだか、やけに薄暗い教室。
窓越しに眺めた空に立ち込める雲は分厚く、夕立の予感に俺は軽い溜め息をつく。

橋本がいれば笑いながら突っ込んでくれただろう。
あいにく橋本は一限だけ受けてグラウンドに向かい、今頃は大好きな野球に打ち込んでいるはずだ。

補習授業を受ける生徒は一人、また一人と減ってしまい、空席が目立つ教室なのに、何故か俺の目の前に座る壱人と彼女。

こうなってくるともう嫌がらせとしか思えない。
俺は毎回決まった席に座るわけじゃないのに、俺より後に登校してきた二人は必ず俺と橋本の目の前の席に座る。

今日はちゃんと傘を持ってきた。
コンビニなんかで売ってるいつものビニール傘だけど。

壱人の彼女、結木さんから借りた傘は相変わらずベッドの上に置きっぱなまま。
持ち主の手にはまだ戻らない。


気まぐれ猫は俺の周りを必要以上にうろつくくせに、一向に俺の方を見ようとはしない。
真っすぐ前を向いた視界に俺が入ることはない。

俺は俺で、なるべく見ないようにしてるのに。わざと。
なのに、壱人はうざいぐらいに俺の視界に入って来る。

『頼むから俺の前をうろつくな』

ついつい口にしてしまいそうになる。

(なんなんだよ。ホントにおまえはもう)

昔からこいつは何がしたいのかわからないような、奇行に走ることも多かったけど。

俺のことなんか放っておいたらいいのに。
一切こっちを見ようとしないし、そっちから話し掛けても来ないくせに。

ただ、いちゃついている自分たちを見せ付けたいようにしか見えなくて、なんとも言えない苛々(いらいら)が募る。

「お。こんな時間か。今日の補習はこれで終わりな。米倉、明日も遅れるなよ」

そう先生にからかわれつつ、今日一日の授業が終わった。


先生のその声に弾かれるように、散り散りに席を立つ落ちこぼれたち。
雨はとうとう降り始めたようで、ぽつりぽつりと大きな雨粒が窓を叩く。

席を立ち、蒸し暑さに開けっ放しだった窓を閉めようとしたその時、窓の外から誰かが俺を呼んだ。

Bkm

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