幼なじみプレイ
涙と猫と赤い傘

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……やばい。
今の言葉、胸にぐっときた。

坊主頭で、ちょっとだけ馬面だけど一応はイケメンな橋本が、いつもの百倍くらいカッコよく見えた。

橋本の言うことはまさにその通りで、10年以上、ずっと壱人のことが好きだったんだ。
望みがないからって、そう簡単に諦められるはずがない。

おまけに俺たちは幼なじみで、積み重ねてきた年月の重みも半端ない。
例えここ数年、壱人が素っ気なくなってしまったとしても。


その日をきっかけに、俺と橋本は前以上に仲良くなった。
と、言っても馴れ合いだったり恋愛感情が絡んだそれじゃなくて、あくまでも友情の絆が強くなったような青春のアレだけど。

「なあ、米倉ってさ。なんて名前だっけ。下の名前」
「はあ?なんだよ急に。いまさらそんなこと聞く?」
「いや、別に。そういや知らないなあって思ってさ。下の名前」

だからこんな会話も青春のアレで、名前がどうこうに深い意味はない。

「……泉だよ」

だから別に教える必要もないんだろうけど、聞かれたらからって素直に答えてしまう単純な俺。

「え、なんだって?」

どうやら声が小さすぎたのか聞こえなかったようで、

「泉だっつってんの!」

思わず、大声を出してしまって墓穴を掘った。


「えっ、マジ?そんな可愛い名前?」

……だから嫌だっつってんのに。こんな女みたいな名前。

せっかく親からもらった名前だけど、小さい頃からこの名前でいい思い出はない。
橋本といえば俺のこの名前がどうやらツボにはまったようで、さっきから一人で騒いでいたりする。

「うわ。泉ちゃんなんだ」
「……悪いかよ」
「や、全然。ってか、これから泉って呼んでいい?」

あまりにも嬉しそうにそんなことを言うから、思わず『いいよ』だなんて返してしまった。


考えてみれば、俺は昔から『米倉』と名字で呼ばれることが多くて、俺のことを下の名前で俺を呼ぶのは壱人ぐらいだ。
壱人とは幼なじみだから当然なんだろうけど、そう言えば小学校からの友達も壱人以外のやつはいつの間にか、俺のことは『米倉』と名字で呼んでいる。

Bkm

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