幼なじみプレイ
可愛いとか言うな!

[6/12]
「……」
「ん?どうした?米倉」

……やっぱり。

「え、うそ。泉ちん、当たりくじ引いちゃったの?!」

広げた紙面一面に、でかでかと『あたり』の文字。
子供のように可愛いひらがな文字のくせに、ご丁寧にも、裏から透けないように鉛筆で薄く薄く書かれている。

ほんっと、このくじ運のなさには泣けてくるよ。
当たって欲しい時には全く当たらないのに。

「なんと言うか……」
「……うん」

両側から俺が引いたくじを覗き込んだ結木さんと橋本が、顔を見合わせてぷっと吹き出した。


「…ぶっ、わははは!」
「笑うなっ」
「や、ごめん。だって……」

あー、もう。
だから嫌だったんだ。くじ引きなんか。

「当たり引いたの誰?米倉くん?」

じゃあ米倉くんに決定ねと言いながら、三橋さんは俺の名前を黒板の代表者の欄にでかでかと書いた。



ああ、くそっ。
なんで嫌な予感っていうものは、こんなに簡単に当たってしまうんだろ。

クラスのほぼ全員に頑張れよって激励されたけど、みんながみんな、人ごと感、丸出しで笑っている。

男子に至っては、

「米倉が代表?米倉、女顔してるから案外いけるんじゃね?」

なんて、のんきに笑ってるし。

女子からは『泉ちゃん』なんて、全く有り難くないあだ名をもらってしまった。
今まで、下の名前で呼ばれることなんかなかったのに。結木さん以外に。

少なからず結木さんが俺のことを『泉ちん』って呼んでいるのが影響したのかしないのか。
ともかく、そんな、なんともおかしな状況になってしまった。



そんな最悪な状況だけど、女装メイク担当者が結木さんじゃないってとこだけは、不幸中の幸いってとこかな。
結木さんはお化け役のみんなのヘアメイクと着付け、自分の裏コン準備で忙しいからと、女装メイクの方は辞退した。

多分、やりたくてうずうずしてただろうけど。
でも、結木さんにメイクしてもらったら、万が一にもばれないとも限らないし。

自分から進んでやっていないとは言え、俺が女装メイクしている時のメイクは結木さん直伝だ。
姉ちゃんのメイクとはまた違うけど、結木さんにメイクしてもらうのはまずい。

結局、メイクは言い出しっぺの女子が担当することになったけど、それはそれで一抹の不安があったりして。

彼女のばっちりメイクは結木さんのより遥かに濃くて、いわゆるギャル系の彼女にメイクしてもらう、そう考えるだけで軽い目眩がした。

Bkm

prevnext
127/133ページ

PageList / List / TopPage
Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved.
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -