腐男子プレイ
[19/35]
結局はそれなりに楽しめたのかどうだかの微妙なカラオケ大会は終わり、それぞれ別々に帰路に着いた。
「あいつら、泉が待ち受けの彼女だって気付かなかったな」
のんきにそんなことを言って笑う壱人に背後から跳び蹴りを食らわせて、部屋から閉め出したのはその日の夜のこと。
どうやら壱人は俺の女装のクオリティーがどれくらいなのかが知りたかっただけのようで、水上や村上に俺が笑い掛けられたら間に割って入って来たりもしたくせに、のんきに完璧だ、なんて笑っている。
壱人いわく、これなら誰の目も気にせずに普通に手を繋いでデートができるレベルらしく…まあ、それに関しては俺も文句は言わない。
ただ、それを確かめるためだけに俺を駆り出したんだとしたら、それに関しては実験台にされたみたいで気に食わなかった。
秋深し。隣は何をする人ぞ。
「はあ……。やっぱり俺はおまえといるのが一番だな」
「な、なんだよ。急に」
「うん。あいつらといても分不相応ってゆーかさ……」
「はあ?!」
あれから数日が過ぎ、平和な日常が戻ってきた。
中間テストの結果がどうだったかは取りあえず置いておいて、波風が立たない毎日を送っている。
間近に控えた学園祭の準備もそろそろ始まって、ロングホームルームの時間を割いて、催し物や例のコンテストの代表なんかが話し合われることになってはいるが、俺は自分には関係がないと高(たか)をくくっていた。
村上と水上のイケメンコンビとカラオケに一緒に行ったからって、特別仲良くなるようなこともなく、相変わらず二人とは廊下で顔を合わせても挨拶するだけの関係は続いている。
別に、二人が嫌いだとか苦手だとかの次元じゃなく、やっぱりどう考えてみても会話が盛り上がるような共通の話題がない。
立ち話で壱人のことを話すにしても、突っ込んだ話になるのが怖くて適当にはぐらかしてしまうし。
このまま、こんな関係で終わるんだろうなとのんきな考えでうつぶせた机。頭の上。
「んふふー」
「な、なんだよっっ」
「…動揺してるでしょ?」
「だ、誰がっっ」
いつものようにステレオで、橋本と結木さんのトークバトルが始まった。
どうやら今年の俺のクラスの出し物はお化け屋敷に決まりそうで、ホッと胸を撫で下ろす。
第一候補は、クラスの女子の大半イチ押しの男女逆転でのメイド&執事喫茶なんだけど、隣の壱人のクラスもどうやらそれに決まりそうで、その情報が入った瞬間にコスプレ喫茶は却下された。
Bkm
prev|next
105/133ページ
PageList / List / TopPage
Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved.