読み切り短編集
二番目でもいいから
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豪太と二人で過ごすクリスマスイブ。

「あったけえ」

薄着で寒そうだった豪太はそのマフラーで喜んでいるようだけど、そう言えば豪太にプレゼントを用意してないことに気付く。

「…ごめん」
「なにが」
「プレゼント用意してなくて」

申し訳なくて俯きがちにそう言ったら、

「充。こっち向いて」
「なに……、てっ!」

豪太からデコピンされた。


なかなか降り止まない雪に、幾分か涼しくなった首をすくめて豪太と二人、帰路を急ぐ。

「充をもらうからいいよ」
「えっ」

豪太は冗談みたいにそう言って、続けて『なんてな』とごまかした。

今夜はクリスマスイブ。
母さんは出掛けていて、きっと帰って来るのは明日の朝だ。

「豪太。今夜はどうするつもり?」
「どうするって。充を連れて寮に帰るつもりだったんだけど……」

お母さんと親子水入らずじゃなって笑うから、

「うち、泊まる?」
「えっ」

ちょっとした爆弾を落とした。

「いいのか?」
「うん。今夜、母さんは留守だし、俺からも豪太に渡したいものがあるし」
「えっ。それって……」
「だからスーパー寄ろうよ」
「…へ?」
「今夜の食事の買い出し」
「あ、ああ。そっか」

なんて、気が抜けたように苦笑うから、

「俺以外に食べたいものある?」

もう一つ、ちょっとした小型のものも投下してみる。


そう言えば一番聞きたいことを忘れていた。
聞かなくてもわかるだろうって言われそうだけど、覚悟を決めて、それでも怖ず怖ずと聞いてみる。

「あのさ」
「ん?」
「俺って豪太の二番目じゃないよね?」

そう言った俺に一瞬、目を見張って、それから今までで一番優しく豪太は笑った。

「一番に決まってんじゃん。それに二番目はないから」

照れ臭そうにそっぽを向きながらそう言われたけど、まだ自分に自信が持てない。
豪太は、まだ俺が不安がっているのを見抜いたのか、

「…やっぱり一番じゃないな」
「えっ」
「充。おまえは俺の一番(ナンバーワン)じゃなくて、唯一(オンリーワン)だよ」

今度は真っすぐに目を見つめながらそう言われて、情けないけどまた目頭が熱くなる。

Bkm
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