読み切り短編集
二番目でもいいから
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いつもながら全く要点を得ない、中川が言いたいであろうことを要約してみる。
中川が高校を受験する直前に、父親の海外勤務が決まったと。
そんななか、勉強のことと言うよりは友達と離れたくない一心で、中川は一人で日本に残ることになる。

頼れる親戚縁者がいるでもなし、両親は無理にでも中川を連れて行こうとするが、本人は日本に残るの一点張り。
その状態で根負けしたのは両親の方で、全寮制のうちの学園に入るならと中川、一人で日本に残ることを許した。

つまり、結果的には友達もいない学園に入学することになったんだけど、中川は、それはそれで特に気にしてはいないようだった。


そもそも父親が転勤する頃には東京から新居がある福岡に引っ越ししているんだし、それなら僻地ではあるけど同じ東京にあるうちの方が、友達と会う機会は多いと中川は思ったらしい。

実際のうちは山奥すぎて外(学園外)に遊びに行くのも億劫なほどで、外部の友達ともなかなか会えなくなるけど、それは受験する時点ではわからなかったことで、ともかく中川はそうやってうちの学校に来たようだった。

『皆月が住んでるとこって、博多駅から近いよね』
「あ、うん。三つ目の駅だけど……」

よく考えてみれば両親に上手く乗せられてるところが、中川らしい。


どうやら本格的に小雨が降り出したようで、何かがパラパラと窓を打つ音が聞こえる。
気温は今朝からあまり上がっていないようで、中川と話しながら布団の中に潜り込んだ。

いよいよ降雪の予感は強くなってきて、そうなると余計に豪太に会いたくなる。
ぼんやりとまた思考をよそに飛ばしていると、

『今からそっち行くから。そっちの駅でその……、会えないかな』
「え」

そんな中川の一言が、俺の思考を現実に引き戻した。

Bkm
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