読み切り短編集
二番目でもいいから
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突然鳴り始めたこの機械音は、メールじゃなくて電話の着信音だ。
恐る恐るサブディスプレイの名前を確認して、

――ピッ

ホッとしたような、少し寂しいような思いで電話に出た。

『もしもし。皆月?』

電話の相手は中川で、そう言えば、中川にも何も言わずに帰省してきたことに気付く。

中川のことは申し訳ないけど、電話が来るまで完全に忘れてしまっていた。

そういや、冬休みに帰省するのかと聞かれて、帰省しないならと誘われていたのに悪いことをしたな。

『いまどこ?』
「あーと、ごめん。自分の部屋」

敷布団の上を転がるようにうつぶせてそう言うと、携帯電話を改めて握り直す。

『福岡の自宅の?』

そうしたら思いがけないことを中川から言われて、思わず返事に詰まってしまった。


なんで携帯電話の電源を入れてしまったんだろう。
帰省前は、絶対に入れないつもりだったのに。

「なんで……」
『知ってるのかって?』

携帯電話の電源も落としてるみたいだったから、寮長に問い合わせたと続ける中川をよそに、初志貫徹を破って電源を入れてしまった理由を考える。

『聞いたら皆月、急に帰省したって言うし』
「うん」

やっぱり、心の中では期待していたのかも知れない。
彼より俺を選んでくれるって。

ホワイトクリスマスになりそうな、豪太と初めて過ごすはずだったクリスマスイブ。
擦れ違い続きだった豪太から連絡があることを。

『それでさ。いま博多駅にいるんだけど……』
「え?!」

そんな俺の未練がましい考えを中川の一言が遮った。



中川はいつも突然で、中川の行動力には驚かされっぱなしだ。
だからなのか、一瞬、中川からストーカーされてしまったんじゃないか…なんて、そんな物騒なことを思ってしまったけど。

脳天気な中川の間抜けた笑顔を思い出し、その考えを打ち消した。

『実はさ。俺んち、皆月んちの近所みたいなんだ』

初耳だった中川のその一言に驚きはしたが、中川は気にせずに続ける。

『中学の卒業間近に一戸建て住宅を買ったのはいいんだけど、親父の海外勤務が急に決まってさ。勉強…つか学校のこともあるし、俺だけ日本に残ったんだよ』

なるほど。
だから中川は、高校受験でうちを受験したのか。

Bkm
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