読み切り短編集
二番目でもいいから
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今の俺には、豪太に真相を聞く勇気はなかった。
もし『そうだ』と言われてしまったら別れ話云々の前に、このままルームメートではいられない。
だけど、他の部屋に変更してもらおうと思っても、急に申し出れば変に思われるだろう。
世間体を気にする俺は、それもできない。
だとしたら、気付かないフリを続けるしかなくて、だけど、彼の口から豪太に伝わってしまったらもうどうしようもない。
どんなに考えてみても答えは出そうになかった。
もうすぐクリスマス。
豪太がその日をどう過ごすか言い出さないのは、彼と過ごすつもりだからだろう。
豪太の恋人は彼で、俺はセフレでしかなくて、やりたい時に俺がいて、だから周りには誰にも言えなくて……、いや。
言わなくて。
ずっと抱えてきた不信感と不安材料が、最悪な形で繋がっていく。
繋がらなくなった携帯電話を耳に宛てたまま、しばらくそのまま動けなかった。
リビングのソファーに身を沈めて、だらりと腕の力を抜くと手から携帯電話が滑り落ちる。
シャワーでほのかに温まった体が、急速に冷えていくような気がした。
ドライヤーの余熱ももう残ってはいなくて、頭が悪い方向に冴え渡る。
それら全てが冬休み初日、12月20日の出来事だった。
Bkm
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