読み切り短編集
二番目でもいいから
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結局は夕食も朝食同様、簡単なもので済ませた。
ご飯が二杯とお漬物に冷や奴、それに出来合いのお惣菜。
火を通さない、手も加えない、料理とは言えないメニューで腹の虫だけを満たした。

まだ帰省していない中川から遊びに誘われたが、そのメールはまだ見ていないことにしてやり過ごす。

「…はあ」

食後はすぐにシャワーを浴びて、まだ日も浅いうちにベッドに潜り込む。
豪太がいないと何もすることがないなんて。
そんな豪太に依存しまくっている自分に苦笑った。



軽くタオルで拭いただけの髪が枕カバーを湿らせる。
それに気付いて、慌てて髪を乾かすために風呂場横の洗面所へ向かった。

室温は適温に保たれているとは言えど、このまま寝たら風邪を引いてしまいそうだ。
そんなことで冬休みを台なしにしたくはないし、そんな当たり前なことを考えながらドライヤーを握る。

癖のないこの髪を豪太は好きだと言うけど、自分では全く気に入っていない。
腰がなく、柔らかすぎるストレートの髪は、頻繁にカットしないと女の子に間違えられるからだ。

黒髪は、見た目で性格が暗く見られがちだ。
子供の頃にそれで虐められていたこともあり、今では褒められることが多いこの髪も、好きにはなれなかった。

期せずして頭皮を温める風が心地いい。
ときおり、頬を掠めるその心地よさが軽い睡魔を誘う。

豪太もいつ帰って来るかわからないし、今日はこのまま寝てしまおう。

「…あ」

そんなことを思いながらドライヤーを止めて髪型を整えていると、微かに耳覚えのある音楽が聞こえてきた。


そのメロディーは去年流行ったラブソングで、聞こえてくるこの音は、豪太の携帯電話の着信音だ。
洗面所を出て、リビングに近付くたびにその音は大きくなる。

「あ、あった」

リビングのいつも豪太が座っているソファーの上に、豪太が持っているはずのそれはあった。

Bkm
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