読み切り短編集
二番目でもいいから
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思えば豪太が朝帰りしただけなのに、最初からこの件には彼が関わっていると確信していた。
エスカレーター組の美少年。
1年A組の篠崎伶。
彼が図書室に現れたあの日から、豪太の態度が目に見えておかしくなったからだ。
エスカレーター組ということは二人は中等部から同じ学校で、調べてみれば彼はハンドボール部のマネージャーで、豪太と直接的な先輩、後輩の間柄だということもわかった。
彼が俺の目の前に、図書室に現れたのはあの日の一回だけだったから、おそらく彼の目的は、俺に直接会うことだったんだろう。
そう言えばハンドボール部の練習場所に、彼はいたようないなかったような。
遠くからでもそうとわかるのは豪太だけだから、はっきりいたとは断言できないけど。
それほどまでに、俺は豪太のことだけを見て来たんだと思うと、余計に不安感が募った。
単に豪太に飽きられただけならまだマシだ。
俺、もしかして重くないか?
毎日毎日、豪太のために夕食を準備して、豪太の帰りを待っている。
そんな新婚のようなかいがいしさもいつかはうざったく思えてくるはずで、豪太は他の誰かの料理も食べたくなったんじゃないか。
こんなことは考えたくはないけど、豪太は他の誰かと浮気をしていて、それでも鈍感な俺は毎回食事の用意をして豪太の帰りを今か今かとただただ待っている。
そんな女房気取りの俺が重すぎて嫌気がさし、豪太は帰りが遅くなっているんじゃないかと思う。
そんな状態で、俺の目の前に現れた篠崎伶。
彼の存在が更に不安を募らせる。
豪太が帰宅して少しだけ寝て、いくらも眠らないうちに起床時刻を迎えた。
不安な思いを抱えたまま、ベッドを抜け出し、洗顔を済ませてキッチンに向かう。
豪太が朝帰りする時はいつも、朝食はいらないと言われている。
それでも簡単な朝食を準備して…と。
もしかして、こんなところも重すぎるんじゃ……。
朝は起こすなと言われてるから、簡単に朝食を済ませて自室に戻った。
ベッドに戻ってもう一度、眠ろうと思ったけど、簡単には眠れそうになかった。
Bkm
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