読み切り短編集
Life is beautiful
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はじめての喧嘩


「……うーっ」

先輩と初めて喧嘩した。
今日一日、先輩の顔を見てないし、声も聞いてない。

わかってる。
悪いのは俺だって。
先輩にだって友達がいるし、先輩の生活があるってちゃんとわかってるつもりなのに。


一日、全く先輩の声を聞いてないと不安になる。
一日、全く先輩の顔を見ていなくてもそう。

先輩はぶっきらぼうだけどちゃんと『好き』の言葉もくれるし、態度でも見せてくれる。
だけど、俺なんかよりいいやつはいっぱいいるし、俺のどこがいいのかが自分ではさっぱりわからない。

だからつい、先輩が俺より友達を優先したから嫉妬してしまった。
俺と友達、どっちが大事かだなんて、女々しく罵倒して嫌われた。

『もうこれ以上、おまえに言うことはねえよ』

そう突き放されたのが昨日の今頃だ。


例えば俺が先輩のように自信満々でちゃんと自分を持っていたら、拗ねたりなんかしなかった。
先輩に似合う人が俺以外にもたくさんいるように思えて、そう考えたら不安で仕方がない。


明日、先輩に『ごめん』って言おう。
仲直りするその前に。

先輩に愛されている自信が欲しくて、あの日のことを思い出す。

屋上で告って、部室で返事をもらったこと。
先輩に『俺も好きだ』って言われちゃって、自分に自信を持てとも言われたことを。


だから。
明日は、ちゃんと先輩に『好きだ』と言おう。


2011年4月

Bkm
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