読み切り短編集
二番目でもいいから
(16/41)

図書委員の仕事でもある図書室の貸出当番は二週間に一度回ってきて、隔週の水曜日がその日にあたる。
ところが次の日。
当番の一年生の体調が悪いとかで、急遽、二日続けて俺が当番を務めることになった。

中川は昨日、部活をサボったことが監督にばれて大目玉を喰らったらしく、今日は大人しく部活に向かっている。
表向きはホッとしつつ、内心では物足りないような感情を感じながら、俺は昨日と同じように職務に就いた。


今日はホームルームが終わってすぐに来たからか、ドアの前には誰もいない。
ホッとしながら鍵を開け、定位置に着いて読み掛けの本を読んでいたら、ちらほら生徒がやって来た。

そうは言っても図書室は穴場スポットで、利用者も常連の四、五人だけだったりするんだけれど。
だから、知らない生徒が紛れ込んでいたらすぐにわかるし、

(――あれ?)

そんなことを考えながら運動場の方に視線を向けたら、いつもの俺の指定席に誰かが座っているのが見えた。



正確には俺の席だと決まっているわけじゃないが、図書委員の仕事以外で図書室に来る時はいつもあの席に座っている。
あそこからは運動場、特にハンドボール部員が練習している辺りがよく見渡せて、自然とそこが特等席のようになっていた。

そこに座っている生徒はここ、図書室では初めて見るけど美少年で有名な生徒で、確か一年生の抱きたいランキングで2位か3位だったような気がする。
その『抱きたい』という表現がしっくりくるような少し小柄で華奢な少年で、何より肌の色が驚くほどに白い。

くりくりでぱっちりとした大きな目に、それを縁取る睫毛がまた驚くほどに長い。
おまけに上に向かってくるりとカールしているし、その睫毛の上に鉛筆ぐらいなら余裕で乗るんじゃないだろうか。

確か篠崎って言ったっけ。
1年A組で生徒会役員じゃない一般生徒だということは、彼はエリート組で成績もいいはずだ。


うちの学校は基本的にA組から成績順に振り分けられて、一年生は特に、A組は生徒会役員以外は中等部からのエスカレーター組の成績優秀者だけで構成されている。
二年生からはその垣根も取り払われるが、とにかく彼はA組だ。

ちなみに、成績は中の上ぐらいの俺と豪太はC組ね。

彼は机の上に一冊の本を広げて、物憂げにページをぺらぺらとめくっていた。
けれどその視線はどちらかと言えばその本のページよりも、運動場の方に注がれている。

Bkm
prevnext
16/41ページ
PageList / List / TopPage

Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved.
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -