読み切り短編集
二番目でもいいから
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図書室は西側の隅に位置していて、夕暮れともなるとオレンジ色の西日が差し込み、教室中が幻想的な雰囲気に包まれる。
そんななか、いつも座っている運動場がよく見える窓際の席に座り、読書をするのが好きだった。

遠目に豪太をこっそり見つめ、表向きには静かに文章を追う。
いつの間にか、読書よりも豪太を見ることがメインになったような気もするけど。


図書室に着くと、もう何人か常連の生徒がドアの前で待っていた。
中川とあれこれやっているうちに、思い掛けず時間を食ってしまったらしい。

慌てて職員室から借りてきた鍵でドアを開け、貸出の窓口であるカウンターに入る。
カウンターと言っても机周りを囲んだこじんまりとしたもので、机の上にパソコンが一台乗っかっているだけのシンプルなスペースだ。

「さーて。なに読もっかなー」

そういつもの調子で言ってしまった中川は周りの生徒に軽く睨まれ、しまったとばかり自分の手で口を塞ぐ。
中川の地声はでかい。
そんな中川に苦笑しながら、昼休みに借りたばかりの本を鞄から取り出して、しおりを挟んでいるページをめくる。



寒々しい空は相変わらずだが、今日もとても天気がいい。
綺麗な夕焼けが見えそうだなと、そんなことを思いながら、なんとなく運動場を見遣る。

この場所からは遠すぎて、運動している生徒も豆粒ぐらいにしか見えなかった。
そんななか、無意識に豪太の姿を探している自分に気付いた。

しかも、どれが豪太なのかわかってしまうとか。

そんな自分に軽く溜め息をつき、紙面に縦に並んだ活字を目で追った。


どうやら中川はいろんな図鑑を見ているようで、やけに真剣なその顔に思わず笑ってしまう。
他にはスポーツの専門書も手に取って、結局は最後まで居座った中川。


貸出係の当番が終わった帰り道。
隣で喋り続ける中川には悪いけど、俺は夕飯の献立を何にするかで頭を悩ませていた。

Bkm
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