読み切り短編集
二番目でもいいから
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それでも気分的なものだろうけど、必要以上に中川と仲良くするのは気が引けた。
だからいろいろと理由をつけて、中川と仲良くするのは極力避けている。
「いや。帰りも遅くなるし」
なのに中川はどう言うわけか俺のことが気に入ってしまったようで、事あるごとに俺に構ってくる。
「気にしなくていいって。俺も読みたい本があるから、そのついでだよ」
別に気にしてるわけでもなんでもないのに中川は図書室にまで着いてきて、いつの間にか学校では中川と一緒にいることが多くなってしまった。
図書室への移動は校舎間の移動でもあって、いくつかの渡り廊下を渡って行く。
校舎内は適温に保たれているものの、さすがに吹きさらしの渡り廊下を歩く時だけは少し寒かった。
「そろそろ冬休みだな。皆月は帰省すんの?」
季節はそろそろ12月も半ばに差し掛かる頃で、年越しの前に恋人たちの祭典のクリスマスも数週間後に控えている。
今年、初めて恋人を持った俺はその恋人のことを思って、中川の話には曖昧に相槌だけを打った。
「冬休み中はクリスマスとか年越しもあるしさ」
そう言えば豪太はどうするんだろう。
というか、俺たちはクリスマスをどう過ごすんだろう。
何かと慌ただしい師走に豪太とゆっくり会話する時間も取れなくて、冬休みの予定もまだ立ててはいない。
俺は豪太に合わせるつもりでいるが、豪太からはまだ何も言われていない。
なのに、
「よかったらクリスマスはともかく、初詣だけでも一緒にどうかな。なんて……」
中川からそう言われて、不意にスコンとその台詞だけが俺の耳に届いた。
その誘いは曖昧に笑ってごまかして、図書室へと急ぐ。
中川は悪いやつじゃないし……、どちらかと言えばいいやつだ。
友達としてなんだから中川と初詣に行っても構わないんだけど、それでも俺は豪太と年末を過ごしたかった。
それに中川とは単なる友達なんだから別にすることもないのに、なんとなく中川と初詣に行けば、見る者によっては浮気と捉えられるような気もした。
ともかく、今の俺にできることは豪太から誘われるのを待つことだけで、冬休みが始まるまでは余計な予定も立てたくはなかった。
Bkm
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