読み切り短編集
二番目でもいいから
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クリスマスを間近に控え、浮足立ったやつが多いなか、俺はいつものように一人だった。
だからと言って虐められていたりはぶられているわけじゃなくて、話し掛けられたらその都度きちんと返すんだけど。

ただ自分から話し掛けたり、自分から行動を起こすのが苦手なだけだ。
相手に今話し掛けたら迷惑じゃないかなとか、そんなことばかり思っていたら話し掛けるタイミングを逃してしまった。

この受動的な流され体質がもとで豪太と付き合い始めたんじゃないかと思うこともあるけど、本当のことを言うと少なくとも誰かが豪太と楽しく笑ってるのを見てるだけで、なぜだか泣きたくなるくらいに豪太のことが好きだった。



結局は今日も先生からの言づけ以外、誰とも話すことがないままに放課後を迎えてしまった。
担任が出て行ってすぐ、荷物を鞄に詰めて教室を出る。

寮に戻る前に図書室に寄って、借りていた本を返さなきゃ。
基本的に朝、教室に向かう前に借りた一冊の本をその日の休み時間内に読み終えて、その日の放課後に返すのが俺の日課だ。

学区内にある図書室もそれなりの在庫数を誇るが、本当のところは生活エリア内にある図書館には敵わない。
図書館は十数万冊の在庫数を誇る大型施設でもあり、ほとんどの生徒はそちらを利用している。

学区内の図書室はいわゆる穴場スポットのようなもので、滅多に誰かと会うようなこともないから不思議と居心地がいい。
実は俺は図書委員に所属していて、週に二日、貸出窓口を任されていることもあり、人より少しだけそこにいることが多かった。


校舎の一般棟を出て、一路、特別棟へと向かう。
その校舎は音楽室や理科室のように特別授業に使う教室を集めた棟で、その一階の一番奥の教室が図書室になっている。

渡り廊下を行く道すがら、運動場を使っている運動部員の声が聞こえてきた。
思わず耳を澄ましてあいつの声を探してしまうとか、ここまで聞こえてくるはずもないのに。

図書室は他の教室よりは少しだけ広いスペースがあり、職員室と同じくらいかな。
実は、その図書室の窓から豪太が所属しているハンドボール部の練習風景が見えて、だから無意識に図書室でいることが多いのかも知れない。

Bkm
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