読み切り短編集
二番目でもいいから
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思えば、なんで俺だったんだろうって今でも思う。
こんなに普通で平々凡々、しかも卑屈なやつじゃなくても豪太を好きなやつはいっぱいいるのに。

俺はと言えば輪の中に入りたくても入れないし、そもそも友達らしい友達もいないんだから話す相手さえいない。
従来が目立たない地味な見た目と事なかれ主義というか平和主義の性格のお陰で、二年生になってからは友達ができなかった。

まだ一年の時は一緒に受験した同じ中学のやつがクラスメートだったからマシだったんだけど、そいつは学力や校風に着いていけなくて二年に進級する前に退学してったし。
何もすることがなくてぼんやり窓の外を見遣れば、ぽつぽつと雨が降り出した。



雨は好きだ。
小さな頃から。

冷たい雨が雪になる気配はなくそれなりに寒いけど、今年は例年よりも暖冬なんだそうだ。
初雪の便りはまだまだ聞けそうにないなと、そんなどうでもいいことを思いながらぼんやりと外を眺める。

多分、豪太は俺の体、つまりは性処理が目的だったんじゃないか。
性処理できれば誰でもよかったんじゃないかって、今ではそう思ってしまう。
ルームメートともなれば四六時中一緒だし、夜は一つ屋根の下で寝ることになるし。

正確には寮全体が一つ屋根の下になるし、同室と言っても寝室、つまり個室は別々にあるんだけど、少なくとも他の誰よりも長く一緒にいることになる。

自然の摂理で、やりたくなった時に目の前に俺がいた。
だから俺は告られたんじゃないかって、そう思った。
結局、付き合うようになってすぐにお互いを利用して性処理をする仲になったし、多分そう言うことなんじゃないかな。

だから寮の中のプライベートな空間でだけしか俺は必要なくて、だから周りには秘密って名目で、こうやって豪太に無視されているんだと思う。
学校で豪太が俺のことを見ることは一度もないし、つまりはそう言うことなんだろう。
そんな確証はどこにもないのに、ついついそんな風に思ってしまう。


それでも、俺は豪太に大事にされているからだと本当はそう思いたかった。
人気者の彼氏を持った代償として、この状態も仕方のないことだと。
寮に帰れば豪太は俺を思い切り甘やかすし、俺は豪太に本当に愛されているんだってただ信じたかったんだ。


この時の俺は、この後全てが音をたてて崩れていくとを知らずに、そんなことばかりを考えていた。

Bkm
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