読み切り短編集
二番目でもいいから
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恋人と友達の狭間で


窓際の一番後ろの席で今日も俺は、あいつをこっそりと見る。
わざとらしく立てた教科書越しに。
友達に囲まれて馬鹿笑いしているあいつは、惚れた欲目を差し引いてもかっこいい。
だからか自然とあいつの周りには人だかりができて、俺が割り込む隙はどこにもなかった。

12月に入り、そろそろ雪の便りが聞こえる頃だと言うのにこの学校はとても暖かい。
この学校は学校中のありとあらゆる場所に空調が効いていて、一年中適温の20度と少しに設定されている。

夏の制服はネクタイとベストがないと肌寒く感じるほどで、反対に冬服は普通一般的な冬の制服だと暑すぎた。
学校指定のブレザーの代わりに、同じく指定されている生地が薄めのカーディガンやセーターで調整している生徒も多く、俺は後者でベージュの薄いセーターをカッターシャツの上に着込んで冬を凌いでいる。

入学したばかりの頃は戸惑うことも多かったけど入学してから一年が過ぎ、高校二年生の二学期末の今ともなればすっかりこの特殊な環境にも慣れてしまった。


この学校は全国でも有数の全寮制の進学校で、おまけに男子校という特殊な環境にある。
それは山の中腹一帯に広がる周りからは閉鎖された学園都市であることとともに、世間からは認識されている。
この学校は中高一貫教育の金持ち学校でもあって、それでも一般枠の高等部から入学した俺でも住めば都とばかりにいつの間にかこの環境に慣れ親しんでいた。


「うそっ、マジ?」

クラスメートに囲まれて無駄に爽やかな笑顔を安売りしている男、藍原豪太は、一応は俺の恋人だ。
豪太と初めて話したのは、高校二年生に進級した4月1日のこと。
学生寮の部屋割りでルームメートに決まり、それから数日しないうちにあいつに告られて今に至る。

恋人同士なのに学校での俺と豪太は友達よりも遠い。
豪太に『俺たちの関係は秘密にしておこう』だとかなんとか言われて、この有様だ。
教室での豪太は俺に話し掛けて来ないし、俺の方をちらりと見ることさえもない。
言葉通りに友達でさえないようで少し淋しかったりもするんだけれど。

それは豪太が俺のことを考えてそうしてくれているようだから、俺からは何も言えない。

Bkm
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