俺様キューピッド
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そう言えば、岳先輩は真面目な性格の割に、見た目が今風で、とてもお洒落だ。
茶髪な髪や少し砕けた髪型、髪に隠れたピアスも気になっていたんだけど……、なんだ。
そういうことなんだ。

「ファッション雑誌の『JUNE』の専属モデルなんだけど、井上くん、見たことない?」

真田くんに言われてドキッとした。
ファッション雑誌の『JUNE』は姉ちゃんがモデルをしている雑誌で、姉ちゃんも先輩と同じ専属モデルのはずだ。

つまりは季節ごとに姉ちゃんと先輩は会ってるわけで、そう考えると、ホント、世間は狭い。
まあ、僕と姉ちゃんは全く似てないし、姉ちゃんの方が身長も高いから、先輩も僕が姉ちゃんの弟だとは気付いてないだろうけど。

「ちなみに副会長も『JUNE』の専属モデルで、二人とも男女問わずに人気だよ」

真田くんは『ファッション雑誌は普通に一般向けだけどね』と男子校ジョークを交えて無邪気に笑って、再び書類に向かった。


今日は少し雲行きが怪しくて、午後4時を少し過ぎたばかりなのに辺りがなんだか薄暗い。
重苦しい雲が立ち込めた空はどんよりとして、気分まで落ち込みそうで憂鬱な気分になる。

雨自体は嫌いってほどじゃないんだけど、気分的なものだよね。
今日は特に岳先輩の姿も見えないし、なんとなく淋しいってゆーか……、ね。

「ごめんっ、遅れた!」
「ごめんね」

それからしばらくして、庶務の高梨兄弟がやって来て、それぞれ自分の職務についた。


パチパチと軽快なタイピングの音を間近に聞きながら、なんとなく空いた席をちら見する。
岳先輩と葉先輩、それから龍平と春川くんがいつも座ってる席が、ぽつんと淋しそうに見えた。

「ごめんっ。遅くなっちゃった!」
「すまん」

龍平と春川くんは、かなり遅れてやって来て、直ぐさまそれぞれに机に向かう。

(――あれ?)

パッと見はいつもと変わらないんだけど……、何かが少し違う気がした。
幼なじみの勘と言うかなんと言うか、相変わらず龍平は僕の方を見ないんだけど。

龍平は結局、僕らの部屋に泊まったのかな。
聞きたいけど、なんとなく聞いちゃいけない気がする。

二人は恋人同士なんだし、泊まると言うことは一つのベッドで寝るって言うことで、一つのベッドで寝るって言うことは、つまり……、そう言うことだから。

Bkmする
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