俺様キューピッド
俺様キューピッド
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自覚してしまったからと言って、僕の毎日は全く変わらなかった。
何らかの行動を起こさなきゃ変わらないのは当たり前で、それは僕のせいなんだけど。
いつものように授業が終わった放課後に屋上へ向かう。
生徒会室の前で深呼吸してからドアを開けた。
「…あ、れ。みんなは?」
「あ。井上くん」
ドキドキしながら開けたのに、会長はそこにはいなかった。
いつも一番に来て何らかの仕事をしてるのに。そう思って少し心配になる。
「会長と副会長はお休み。他のみんなも用事があるから遅れるみたい」
部屋にいたのは会計の真田くんと議長の板垣くんだけで、二人は向かい合って談笑していた。
と、言っても板垣くんはほとんど無言で頷いたりしてるだけだけど。
春川くんは龍平を迎えに行ったし、なんだか少し拍子抜けだ。
もう少ししたら学園祭の準備もあるのに、そう思ったら少し不安にもなる。
「…葵。そこ違う」
「え、どこ……。あ。ホントだ」
三人で少し談笑した後、それぞれの仕事に向かった。
パソコンに向かって数分、ふと手を止める。
そう言えば会長がお休みって……、会長は元気だったはずなのに何かあったのかな。
「あの、真田くん」
「ん。なに?」
「あの、会長がお休みって……」
「ああ。井上くんは知らないか」
真田くんはそう言うと板垣くんに目配せをして、二人は何やら目で会話をしている。
幼なじみでもある二人は僕と龍平みたいなもので、会話をしなくても、お互いの考えていることがわかるんだろう。
ちょっと前の僕らもそうだったのに、今の僕はどうかしちゃってる。
「まあ、ちょっとした秘密っていうか……、公然の秘密っていうか。会長と副会長、実はモデルの仕事もしてるんだ」
「え、モデル?!」
「うん。会長に聞いてない?結構有名なファッション誌なんだけどね。季節毎に……、三ヶ月に一回か。撮影があるみたいで、三日ぐらい学校も休んでね」
思い掛けないことを真田くんから聞かされて、ふと、うちの姉ちゃんのことを思った。
僕のお姉ちゃんは大学生で、実は高校生の頃からモデルの仕事もしている。
平凡な見た目の僕とは違って、お父さん似の姉ちゃんはとても美人だ。
身長も僕より高いし、スタイルもいいし。
昔から自慢のお姉ちゃんだったけど、まさか先輩もお姉ちゃんと同じだったとは思わなかった。
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