俺様キューピッド
俺様キューピッド

[77/96]

それぞれの想い


(…えっと、この状況は……)

起きぬけの、まだはっきりしない頭で考えてみる。
壁掛けタイプのお洒落な時計が6時すぎを指しているけど、今が夕方じゃなくて朝だってことだけは確かなんだけど。

寝ぼけているからか、上手く考えがまとまらない。
なんで僕、岳先輩のベッドで眠っているんだろう。

それだけじゃなくて隣に先輩が眠ってるし、おまけに先輩の腕に抱き込まれていたから軽いパニックを起こしてしまった。


「……ん」

軽く声を漏らして先輩が身じろいだから、体が思わず硬直してしまう。

な、なんで先輩、上半身裸なの。
それで、僕はいつの間にかパジャマを着てるし。

少しずつ頭が冴えてくると、自分の措(お)かれている状況に目が眩(くら)んだ。
ソファーで眠ってしまったはずなのに、いつの間にか先輩のベッドで寝てるし、しかも、しっかりとホールドされてるし。

それからこれが一番信じられないし、恥ずかしいんだけど、僕がいま着てるパジャマって、先輩のパジャマじゃないのかな。
上半身裸の先輩は、パジャマの下だけを履いている。

で、僕はパジャマの上を着てるわけだけど、いつの間に脱がされたのか、下半身は下着だけにされていた。


な、な、な……。
こ、これって恋人同士が初めて朝を迎える、定番のあれだよね。

自分が置かれている立場にわたわたしていたら、

「…ん。ハル?」

先輩が目を覚ました。
慌てて先輩の足にくっついてた生足を離したけど、寝ぼけた先輩にぐいっと引き寄せられてしまう。

ドキドキうるさい胸の鼓動。
着崩れて、ずり上がってきていたパジャマを慌てて直した。

体格差もあるんだろうけど、僕が先輩のパジャマを着ると、まるでシャツワンピのようになってしまう。
裾の丈は太股の半分くらいまであるし、袖の長さは僕の腕の付け根から指先までがすっぽりと袖の中に隠れるぐらいまであって、この長さの袖って確か萌え袖とか言うんだっけ。


先輩と僕の間に、その、恋人同士の行為がなかったことは火を見るよりも明らかだ。
先輩がそんなことをするわけないし、そもそも先輩が僕にそんな気を起こすわけがない。

そう考えたら不思議と落ち着いた。
めくれ上がった後ろを引っ張って直して、まだ寝ぼけたふりをして、もう一度、先輩にくっついてみる。

Bkmする
前へ | 次へ ]

77/114ページ
PageList | List | TopPage ]

Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved.
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -