俺様キューピッド
俺様キューピッド
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おまけに目が半端なく悪いから眼鏡は手放せないし、レンズもかなり分厚いし。
も一つおまけに、身長は華奢で可愛い春川くんと全く同じなのに、僕はちょっとだけぽっちゃりしている。
「あー。やわらけえ」
「や、やめてよ」
龍平がたまに背後から僕のお腹の肉を揉んできたり、頬っぺたを引っ張ってきたりして、それだけはとても嬉しかったんだけど。
とにかく平凡な上に地味で目立たない僕が、みんなのアイドルの春川くんに勝てる要素はどこにもない。
「…僕なんか見た目、オタクだし」
ほんもののオタクじゃないけど。
「地味だし」
見た目も性格もね。
「目立たないし」
ちゃんと自覚はしてる。
自虐的に欠点をひとつひとつ揚げながら花に水をやり、一本、一本、丁寧に雑草を抜いていく。
龍平に恋人ができたことも改めて自覚したら、なんだかちょっぴり泣けてきた。
「――っっ」
泣くもんか。
「っっ、ふっ」
晴陽、男だろ。
「ふぇ……」
でも限界。
「…龍平のばか」
可愛い子の泣き顔は絵になるけど、きっと僕は今ひどい顔をしてる。
ぎゅっと唇を結んで零れ落ちる涙を手の甲で拭ったら、
「……おい、おまえ。泣いてんのか?」
背後からその乱暴な言葉遣いには似合わない、とても優しい声がした。
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