俺様キューピッド
俺様キューピッド

[4/96]

おまけに目が半端なく悪いから眼鏡は手放せないし、レンズもかなり分厚いし。
も一つおまけに、身長は華奢で可愛い春川くんと全く同じなのに、僕はちょっとだけぽっちゃりしている。

「あー。やわらけえ」
「や、やめてよ」

龍平がたまに背後から僕のお腹の肉を揉んできたり、頬っぺたを引っ張ってきたりして、それだけはとても嬉しかったんだけど。
とにかく平凡な上に地味で目立たない僕が、みんなのアイドルの春川くんに勝てる要素はどこにもない。


「…僕なんか見た目、オタクだし」

ほんもののオタクじゃないけど。

「地味だし」

見た目も性格もね。

「目立たないし」

ちゃんと自覚はしてる。

自虐的に欠点をひとつひとつ揚げながら花に水をやり、一本、一本、丁寧に雑草を抜いていく。
龍平に恋人ができたことも改めて自覚したら、なんだかちょっぴり泣けてきた。

「――っっ」

泣くもんか。

「っっ、ふっ」

晴陽、男だろ。

「ふぇ……」

でも限界。

「…龍平のばか」

可愛い子の泣き顔は絵になるけど、きっと僕は今ひどい顔をしてる。
ぎゅっと唇を結んで零れ落ちる涙を手の甲で拭ったら、

「……おい、おまえ。泣いてんのか?」

背後からその乱暴な言葉遣いには似合わない、とても優しい声がした。

Bkmする
前へ | 次へ ]

4/114ページ
PageList | List | TopPage ]

Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved.
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -