俺様キューピッド
俺様キューピッド

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こうなることは薄々わかっていたのに、いざこうなってみたらやっぱり覚悟はできてなかったみたいだ。
龍平が春川くんに惹かれていたことなんか、とっくの昔に気付いていたことなのに。

だって、好きな人が誰を見てるかなんて嫌でもわかる。
龍平が春川くんを見ている以上に、僕は子供の頃から龍平のことだけをずっと見てきたからだ。

龍平の黒髪、短髪の飾らない髪型は子供の頃のまま。
なのに年々かっこよくなっちゃって、高校生になってからまた龍平は僕を置いて大人になってしまった。

中学時代の龍平は女子に物凄くモテて、それはそれで気が気じゃなかった。
そんなこともあって、高校からは男子校だとホッと胸を撫で下ろしたのもつかの間、入学した高校はちょっと特殊な学校だった。

龍平は入学早々中等部からのエスカレーター組を抑えて、新入生の抱かれたいランキング一位に選ばれた。
それと対になるように抱きたいランキング一位に選ばれたのが春川くんで、言ってみれば二人がくっつくのは運命のようなものだったんだろう。

とにかく平凡な僕とは違って、春川くんは生まれながらのお姫様のようだった。
男なのにお姫様って表現はおかしいかも知れないけど、春川くんの場合は美少女って言葉がしっくりくる容姿をしている。

ぱっちり二重で大きな瞳はいつもうるうるしているし、その瞳を覆う睫毛がまたびっくりするほど長い。
おまけに上に向かってくるりとカールしているし、形のいい小ぶりの鼻とぽってりと赤い唇も女の子のようにつやつやしている。

色素の薄い真っ白な肌に、うっすらと薔薇色を帯びた柔らかそうな頬。
生れつきだろうハニーブラウンの髪はさらさらのストレートで、渡り廊下を歩くたびにさらりと風に揺れた。

春川くんのお母さんはフランス人らしく、春川くんはまるでフランス人形のようで、そんな春川くんに平凡な僕が敵うわけがない。


フランス人形の春川くんに対して僕は五月人形って表現がぴったりで、実際に似てるなって自分でも思う。
小さな一重の目はある意味ではくりっとしてるとも言えるんだろうけど、睫毛も真っすぐなのがちょろりと上下にあるだけだ。

おまけに小さな団子っ鼻。
口だけは春川くんと同じように、おちょぼ口で可愛いと言えなくもない。
ただ、それらが子供っぽさを際立たせてしまって、おかっぱに近い髪型のせいもあるんだろうけど、僕は鉞(まさかり)を担(かつ)いで前掛けをした金太郎にそっくりだ。

もちろん僕も自毛だけど、どちらかと言えば剛毛と言える程のストレートの髪で、普通の人より黒いと言われるくらいに真っ黒な髪だ。

Bkmする
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