俺様キューピッド
俺様キューピッド

[63/96]

会長を振り回す?
…僕が?
僕は会長を振り回してるの?

葉先輩はそう言うと、申し訳なさそうに少し困ったような顔で笑った。

会長を、岳先輩を解放する?
それ以前に、僕は岳先輩を自分に縛り付けているんだろうか。

「ヘンなことを頼んでごめんね。また悩ましちゃったかな」
「あっ……、いえ」
「…すっかり冷めちゃったね。紅茶。もう一杯、淹れるね」

葉先輩の綺麗な指先が茶器を操るのをぼんやり眺めた。
かちゃりと小さな陶器同士がぶつかる音を立て、受け皿の上に新しく淹れ直されたミルクティーの入ったカップが置かれる。

立ち上る湯気をぼんやりと見やりながら考えてみる。
葉先輩の言ったことを最初から。

僕は本当に、恋愛の意味で龍平のことが好きだったんだろうか。



『晴陽。俺……』
『な、なに』
『…彼氏ってゆーか、恋人ができた』

龍平に失恋した夏休み最後の日。
自分の半身がもがれたような気がした。
今までいつもそばにいてくれた龍平が、大事な幼なじみが他の誰かに取られてしまう。

「…あ」
「ん?」
「あ、いえ。なんでもないです」

龍平を好きな気持ち。
もしかして……、そうなのかな。
答えが出そうな瞬間、ポケットに入れてあった携帯電話が震えた。

メール着信。
メールを開封するまでもなく、誰からのメールかすぐにわかる。

このメールの送り主は二人きりでなかなか会えない分、毎日決まった時間に取り留めのない内容のメールをくれる人。

結局はミルクティーを二杯、ご馳走になって、

「今日はごちそうさまでした」
「いえいえ。お粗末さまでした」
「おやすみなさい」
「うん。おやすみ。気をつけて帰ってね」

学生寮の前で葉先輩と別れた。


帰る道すがらもらったメールを確認すると、胸のドキドキが止まらなくなった。

(…このドキドキはどっちの好き?)

そう考えると胸が熱くなる。

わかっちゃったかも。二つの好きの気持ち。
そんなことを考えながら自室のドアを開けたら、

「あ」

玄関のドアの前で、龍平と春川くんが抱き合ってキスをしていた。

Bkmする
前へ | 次へ ]

63/114ページ
PageList | List | TopPage ]

Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved.
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -