俺様キューピッド
俺様キューピッド
[62/96]
真剣に考えていると、
「ね、恋愛の好きとそれ以外の好きの違いってわかる?」
そう聞かれた。
まだ整理がつかなくてぐるぐる考えているのに、もう一つ考えることが増える。
龍平のそばは居心地がよくて、それ以前に龍平といることが僕の当たり前だった。
この感情が恋愛じゃなく友情の最上級の想いだとしたら、僕は錯覚してしまったことになる。
「それはね。相手とね、キスしたいかどうか。もちろん、それ以上も」
まだ答えが出ないうちに葉先輩は、そう言った。
また胸が小さく跳ねた。
それに胸がつきりと痛むような感情が入り混じる。
「ごめん。ちょっと赤裸々すぎたかな」
「あ、いえ」
「でも、よく考えて欲しいんだ」
そう言うと葉先輩は空(から)のカップに新しく紅茶を注いで、琥珀色の液体をスプーンで軽く掻き交ぜた。
辺りはすっかり暗闇に包まれいて、もう結構、いい時間なんだろう。
「もちろん、プラトニックラブ…つまりは純愛だとか、肉欲が絡んで来ない愛情もあるとは思うんだ。恋愛のなかでもね。けど、それって所詮は綺麗ごとで、恋愛になると相手に欲情するし、相手に触れたい、触れられたいって思うのが当たり前だと思うんだ」
そう言うと、葉先輩は二杯目の紅茶にゆっくりと口をつける。
僕……、龍平とキスしたいって思ったことあったっけ。
触りたいとか、触って欲しいとか。
「ふざけてキスしたことない?小さな頃とかに」
「えと、ないです」
「じゃ、頬とか額とか」
そう言われて、不意に会長との出来事を思い出した。
あの時、どう思ったっけ。
不意打ちだったし、熱にうなされてた最中だったけど。
もっとしてとか……、頬じゃ足りないとか。
触って欲しいって思わなかった?
自問自答していると不意に、
「じゃあ、岳とは?」
そう聞かれて、小さく胸が跳ねた。
答えられないでいると、
「岳のことは好き?」
続けざまにそう聞かれる。
会長のことは好きと嫌いかのどちらかと言えば好きで、その好きはキスやそれ以上をしたい好きかどうかと考えたら……。
「ハルくんのなかで、ちゃんと答えが出たら岳を解放してあげて」
優しい声でそう言われて、また胸がつきりと痛む。
「岳は俺様に見えて実は優しいやつだから、悩んでるハルくんを放っておけなかったんだろうね。だから登坂くんへの気持ちにちゃんと区切りがついたら、これ以上、岳を振り回さないで欲しいんだ」
[ 前へ | 次へ ]
62/114ページ
[ PageList | List | TopPage ]
Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved.