俺様キューピッド
俺様キューピッド

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僕のは小さな花壇一つを作り上げる簡単なガーデニングだけど、先輩が詳しいガーデニングは、庭一つをコーディネートする本格的な英国式のもので、先輩の話を聞いているだけで勉強になる。
うちの学校の中庭は薔薇を中心に四季折々の花が規則正しく配置されていて、これはプロの人が整備している。
そんな中庭には敵うわけがないんだけれど、葉先輩だけは僕の花壇を褒めてくれるのだ。

周りが薄暗くなるまで先輩といろんなお喋りをしながら土を弄って、周りが見えづらくなったところで、

「寮に帰る前にちょっとお茶しない?」

そんな先輩のお言葉に甘えて、僕らはいつもの中庭テラスのテーブル席についた。



辺りに薄闇が迫り、テラスの明かりが一斉に着く。
明かりも含めてコーディネートされている中庭は、日本でも有名なコーディネーター(庭師)さんの手によるものだ。

「いつものミルクティーでいい?」
「あ、はい。お願いします」

それから葉先輩が用意してくれるお茶も英国式の本格的なもので、さすがは水月グループの御曹司って感じがする。
なのに三鷹グループの御曹司の会長と同じで、とても気さくに話し掛けてくれるし、葉先輩って本当にいい人だ。

「そうだ。今度の土曜日にでもゆっくりお茶会しない?」
「あ、いいですね。僕、何かお菓子を焼いてきます」
「ほんと?」
「はい」
「わ、楽しみだな」
「何がいいですか」
「そうだなあ……」

そんなこんなで、土曜日のお昼に葉先輩と正式にお茶会をすることになった。


いつものように今日あったことや近況を報告しあって、ちょっとしたお茶会は進む。
先輩が飲んでいるのはアールグレイという種類の紅茶で、先輩はいつもお砂糖を入れない。

今日のお茶菓子はレストランのコース料理のデザートに出されるらしい焼きプリンで、僕のために先輩がわざわざ用意してくれていた。
いつもそう。だから、次のお茶会には何か特別なものを用意しなくちゃ。

そんなことを考えていたら、先輩がこちらをじっと見てることに気がついた。


「え、と。先輩?」
「うん?」

葉先輩って、たまにこんなことがあるんだよね。
特に用事はないみたいだけど、僕をニコニコ笑いながら見てることが。

「美味しい?」
「あ、はい。とても美味しいです」
「そう。よかった」

そのたびにドキドキしちゃって仕方ないんだけど、先輩は特に気にしてない風に、僕から目線を外すと静かにカップに口づける。

Bkmする
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