俺様キューピッド
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好きの気持ちと秋の空


見上げた空が心なしか高く感じるのは気のせいだろうけど、澄んだ空気と柔らかな陽射しが心地いい今日この頃。
暑さもすっかり和らいで、明日からは秋本番の10月だ。
生徒会役員のお仕事を手伝わせてもらうのもそろそろ一ヶ月になり、なんとか仕事にも慣れてきた。

まあ仕事といってもあくまでも僕は補佐役で、書類を纏めたり最終チェックをする簡単なお仕事だけどね。

「…よっと。こんなもんかな」

生徒会の仕事が早く終わった時は、こうやって土をいじるのもすっかり習慣になっていたりする。



毎朝、学校に向かう前に水やりだとかの簡単な世話はしているんだけど、植え替えたばかりのこの時期は、ちゃんと新しい土に根付くまでは油断は大敵なんだ。
春や夏場のように害虫はそんなに多くはないけど、急激な気温の変化は植物の風邪のような病気を引き起こすこともあるし気が抜けない。
別に、校舎脇のこんな小さな花壇なんか誰も見てないだろうけど。

「わ。だいぶ秋らしくなったね」
「あ、副か……、じゃない。葉先輩」

この人以外は。


生徒会室でみんなとは別れたんだけど、葉先輩、まだ校内にいたんだ。
先輩が秋らしいと言いながら見ているのは空でも周りの景色でもなく目の前の花壇で、葉先輩だけは僕の花壇をちゃんと見てくれている。

「この花はダリア?」
「あ、はい」
「そう。可愛いね」

そう言われて、思わず顔が赤くなるのが自分でもわかった。

「あれ、顔が赤いよ?」
「な、なんでもないですっ」

薄いピンクのコスモスが春川くんで、淡い黄色のダリアは僕。
まるで葉先輩に可愛いと言われたみたいで、胸のドキドキが止まらない。

「このダリアってハルくんみたいだよね」
「え、ええっ」
「うん。やっぱり可愛い」

ダリアを見ながらだけどそう言われて、とうとう顔が火を噴いた。


わかってるんだけどね。
僕のことを言われてるんじゃないことは。
だけど免疫が全くないからか、少しでもニュアンス的に近いことを言われたらドキドキしてしまう。

「この黄色い小さな花はマーガレット?」
「えっと、よく似てるけどマーガレットと同じキク科の花で、ユリオプスデイジーっていう花なんです」
「へえ、そうなんだ」

葉先輩は花にも詳しくて、先輩と話すのはとても楽しい。

Bkmする
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