俺様キューピッド
俺様キューピッド

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うちの学校は中高一貫教育の都内有数な進学校でもあり、生徒会の執行部や風紀委員を始めとした各種委員会は一、二年生が役員を勤める決まりになっている。
高校三年生の一年間は受験勉強に没頭できるようにとの学校側の配慮から就任を免除され、そのかわりに入学して早々龍平は生徒会の書記に選ばれた。

生徒会役員の内訳は二年生は生徒会長と副会長の二名のみで、それは前年度、つまりは一年生の最後に校内総選挙で決められる。
それ以外の書記や会計、議長、庶務なんかの役職は受験組の入試とエスカレーター組の進学テストの成績順に新入生の中から選ばれ、両方合わせた中で首席だった龍平は必然的に書記に就任した。

他にも生徒会の推薦で補佐役の仮メンバーが在籍することもあり、これは特に人数や一般入学組とエスカレーター組とのキャリアの制限はない。
その補佐に春川くんが就任していて、つまりは僕がクラスメート兼ルームメートだと龍平に紹介する前に二人は既に出会っていたわけだ。

今考えると龍平は、その頃から春川くんのことが気になっていたんだろう。

『あれ、春川?』
『え。井上くんの幼なじみって、登坂くん?』

初めて僕らの部屋を龍平が覗きに来た時に、そんなやり取りがあったことを不意に思い出した。



じりじりと照り付ける太陽を左腕で隠して空を見上げる。
熱気を含んで成長を続ける入道雲に不吉な予感を覚えながら、僕らは帰路を急いだ。
バス停から10分ほど歩いた所で脇道を真っすぐ行けば、学校の大きな門が見えてくる。

学校はちょっとした学園都市になっていて、独身の職員も一緒に暮らす学生寮と文房具や寮生活に必要な日常品、各種参考書類も充実したコンビニが敷地内に学校施設と隣接している。

「ちょっと花壇を見てくるから先に行ってて」

途中、どうにもバツが悪そうな龍平にそう言った僕は、長期休暇を終えて寮へと戻る龍平と別れて一般校舎脇の花壇へと向かった。


うちの学校は三年生は特別に免除されるけど、基本的に一、二年生は必ず生徒会か委員会、各種クラブのどれかに所属することが義務付けられている。
ちなみに、特に特技も何もない僕は、ほとんど園芸部と化している美化委員会だ。

龍平たちとは違って役職にも何も就いていない僕は、ただ単純に交代で花壇を始め、校内の美化活動にあたっているだけでこれといった重役もない。
そのお陰で龍平から離れられて、密かにホッと胸を撫で下ろした。

ひどく照れ臭そうな龍平の隣で僕は、必死で涙を堪えていたから。

Bkmする
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