俺様キューピッド
俺様キューピッド

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(――翌朝)


あれ……、なんだろ。
あたたかい……。

夢から醒めても、まだ夢の中にいるみたいだ。

「あ」

視線を移した先、ローテーブルに突っ伏して龍平が眠ってる。

(え、と……)

そっか。僕……、熱を出しちゃったんだ。
それで、僕の手をしっかりと握っていてくれたのは春川くんだ。

きっと二人とも、寝る間も惜しんで看病をしてくれたんだろう。
僕のベッドに半身を乗り上げるような姿勢で眠る春川くんは制服のままで、耳を澄ませば静かな寝息が聞こえてきた。


目覚まし時計を見るとまだ早朝の6時すぎで、いつもの癖で早起きしてしまったことを知る。
額に手を宛ててみると熱冷却シートを貼ってくれていて、それはすっかり常温に戻っていた。


(――春川くん、ありがとう)

起きる前にまずは心の中でお礼を言って、丸まってる体に布団をそっと掛ける。

春川くんは可愛い上に優しくて、いつも全く目立たない僕にまで構ってくれる。
クラスに一人も友達がいなかった頃、ルームメートでもある春川くんがいなかったら僕はどうなっていたんだろう。

起きたらちゃんと『ありがとう』を言おうって思っていたら、春川くんの瞼がぴくぴく動いた。
それを合図に目覚めるようなことはなかったけれど。

「……ん」

その代わりに龍平が僕が起きた気配に気付いたのか、むっくりと身を起こした。


もしかして龍平も心配してくれたのかな。そんなことを考える僕は、まだ龍平のことが好きなんだろうか。
龍平への気持ちはだんだんと薄れてきている気はするのに、まだ夢うつつでいるからかそんなことを思ったり。

「りゅ……、登坂くん。おはよ」

龍平のことを名字で呼ぶようにって、会長にそう言われていた。
そうすることで、僕のことを意識し始めるからって。

僕の言葉を無言で聞いていた龍平は、一瞬顔を歪めて、次の瞬間にはまた顔を反らした。
龍平にもお礼を言ったら、

「俺は何もしてない。看病をしたのは蓮だよ」

そう返されて、

「起きたら蓮に礼を言っとけよ。一晩中、おまえのそばを離れずに看病してたんだから」

そう言うと、こちらを見ないままで後ろに向かって手を振りながら部屋から出て行った。

Bkmする
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