俺様キューピッド
俺様キューピッド
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今度は会長に背負われて、学生寮までの道のりをたどる。
僕らの姿は笑いたくなるくらいに目立ってるんだけど、動けないから仕方ない。
胸のドキドキが会長に聞こえちゃいそうで、腕を突っ張ってなんとか体を起こしてみるけど、へにゃりと力が抜けてうまくいかない。
なんとかごまかそうと、
「あの……、会長」
「ん?」
「…重くないですか?」
そう聞いてみたら、
「気にするな」
重くないって返事じゃなくて、重くないかの質問をごまかされたことが少し気になったけど、会長はそう言って笑った。
学校エリアはそんなに広くはないんだけど、とにかく生活エリアの方が半端なく広い。
距離にして学生寮まで徒歩で20分は余裕で掛かるし、そう思ったら申し訳なくて仕方なかった。
学生寮の門からだともっと掛かるし。
「…迷惑かけちゃった」
「ん?」
「会長の役に立ちたかったのに」
だから補佐の仕事も頑張ってきたのに。
会長の背中でうなだれてたら、エレベーターの中で地面に下ろされた。
「迷惑どころかとても助かってる」
立てるかと、気遣かってくれる会長に支えられてなんとか立ってたらそう言われた。
学生寮は一般棟もエレベーター完備だからホッとする。
階段での往復とか、さすがの会長も苦しそうで、
「…ダイエットしようかな」
ついついぽつりと漏らしたら、
「――ふっ」
笑われてしまった。
普段、みんなの前では岳先輩と晴陽と呼び合っているけど、二人きりになると会長とハルって呼び方になる僕ら。
今まで自分の容姿なんか全く気にならなかったのに、会長の隣に並ぶ機会が増えたからか、その……。
会長に似合うようになりたいというか。
顔だけは生まれついたものだからどうしようもないけど、せめて体型だけでもって思うのに、
「ダイエットは禁止だ」
「…う」
そう、きっぱりと言い切られてしまった。
「ハルはそのままがいいんだよ」
次の瞬間、真正面からぎゅっときつく抱きしめられて、そのまま足が地面から離れるぐらい抱き上げられた。
「…ちょ、会長。僕重い……」「重くないさ」
腋の下に腕を入れて持ち上げられ、顔の位置が会長と同じになったところで会長と視線がぶつかる。
その目はとても優しくて、それからとてもかっこよくて。
恥ずかしさに思わず顔を背けたら、何かがふわりと頬に触れた。
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