俺様キューピッド
俺様キューピッド

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生徒会室は離れにある特別室のようなもので、執行部のメンバーだけで使うには少し広すぎるぐらいの広さがある。
隣は風紀委員が使っていて、作りはほぼ同じなんだと会長が教えてくれた。

「どうだ晴陽。なんとか今日中に片付きそうか?」
「あ、はい。多分、大丈夫だと思います」

僕に任された仕事は表向きは書類の最終チェックで、

「すまんな。よろしく頼む」
「はい」

ほんとのことを言うと春川くんが打ち間違えた箇所を修正することで、会長にすまなさそうに頭を下げられた。


春川くんは転校してきた中学生の頃から補佐役をしているけど、正直、その仕事ぶりはミスも多いし、満足のいくものじゃなかったみたいだ。
何らかの役職を与えておかなきゃいけない訳ありの春川くんは春川くんで、与えられた仕事に一生懸命、取り組んでいる。

それだけに何も言えないみたいで、今までは最終チェックをしていた会長が僕の担当分の仕事も熟していたらしく、パソコン画面を目で追って僕に『本当に助かるよ』と言ってくれた。


僕は見た目がぼんやりしてるからそうは見られないみたいだけど、実はタイピングも結構得意だったりする。
だから、少しでもお役に立てたら嬉しいんだけど。

みんな普段はさっきのように砕けた感じなんだけど、仕事になると態度がまるで違う。
こんなメンバーが生徒会の執行部メンバーだからこそ僕らの学校には不良と呼ばれる生徒はいないし、大きな問題が起きることもないんだよね。

執行部のメンバーがお手本になってるから、校則はないに等しい自由な校風だけど、僕ら一般生徒は羽目を外しすぎることもないんだろう。



会長と副会長はさっきから何か難しいことを話し合ってるし、会計の真田くんは満面の笑みで大きな電卓を叩いている。
真田くんのお父さんは会計事務所の所長さんで、真田くんも予算の計算をしている時が一番楽しいと言っていた。

そのゴテゴテにデコレーションされた電卓は商業高校を卒業した年の離れたお姉さんのお下がりらしくて、そのアナログさが真田くんには似合わないというか。
なんだか袖カバーをした昭和の事務員のかっこが思い浮かんで、思わず笑ってしまう。

Bkmする
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