俺様キューピッド
俺様キューピッド
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なのにその執行部メンバーは、仕事以外ではみんな優しくて、人間臭い。
「はあ。なんとか間に合いそうだね。ほら、ハルっち。急いで!」
特別棟の通用口に着いて安心した僕に、春川くんは笑って言った。
そうだった。生徒会室は屋上にあり、もう少し廊下を走って階段を駆け登らなきゃいけない。
「わわっ、ちょっと待って」
元気いっぱいの春川くんに置いてかれないように、なんとか後ろを着いていく。
春川くんが特別運動ができるわけじゃなくて、僕が段違いにできないだけなんだけどね。
多分、春川くんは普通ぐらいじゃないかな。
「ほら、ハルっち!」
そんなことを考えていたら、不意に春川くんに手を引かれた。
その瞬間、なぜだか会長のことを思い出す。
「こらー。廊下は走らない」
保健室の前を走っていたら、春原(すのはら)先生に叱られた。
春原先生は近隣にある大病院のお医者さんでもあって、この時間まで学校にいるのは珍しい。
いくつかの資料室の前を通りすぎて、一番奥にある階段へ。
この階段を駆け登れば、最上階の踊り場の向こう。
重い扉をカードキーで開けた向こうに生徒会室はある。
「わ、眩し……」
西日というには眩しすぎる太陽の光を正面から浴びて、文字通り眩しくて目を開けていられない。
夏の残党の蝉の鳴き声(多分蜩かな)に聴き入っていると、
「わわっ!」
後ろから誰かに膝カックンされた。
「ぶふっ。毎回見事に引っ掛かってくれるなあ」
そう嬉しそうに笑いながら後ろに倒れた僕をしっかりと抱き留めて、おまけに腰に腕を回してしっかりとホールドされる。
「もうっ。冬季くん。どさくさに紛れてお腹を摘まないでよ」
「だって、やわくて気持ちいんだもん」
気になっていたことに文句を言うと、
「あっ。冬季、ずるい!俺もハルっちに触りたい!」
そう言って、今度は冬夜くんに正面から抱き着かれた。
なんと言うのか、僕は昨日一日でみんなの玩具(おもちゃ)になっちゃったみたいで、
「あっ。僕もぎゅってしたいな」
「………」(無言で頭を撫でる)
「ハルっちってば、可愛い!」
「ふふっ。僕にも抱きしめさせてくれるかな」
みんなに代わりばんこにハグされちゃった。
「…なにやってんだ」
なぜだかとても不機嫌な声の会長に引きはがされるまで。
「ほら、晴陽。入るぞ」
会長のそんな一言で生徒会室に入る僕ら。
その時の僕は、龍平だけが始終無言で、その輪に入って来なかったことに気づかなかった。
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