俺様キューピッド
俺様キューピッド

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※龍平SIDE

まだ付き合い始めたばかりの可愛い恋人と楽しいひと時を過ごしたばかりなのに、なんとも重苦しい気分でソファーに沈む。
無駄にだだっ広い部屋は俺には少しばかり広すぎて、使っていないスペースが大半だ。

「…くそっ。言いたいことだけ言いやがって……」

だが、彼の言うことは正論だ。
恋人が自室に戻った後にやってきた男によって、なんとも複雑な思いをさせられた。

『まあ、言いたいことはそれだけだ』

そう意味ありげに含み笑って戻っていった生徒会長、三鷹岳。
幼なじみである晴陽のことは、俺が一番知っていると思っていた。
そんな晴陽がいきなり会長と付き合い始めたから何か裏があると踏んでいたのだが、会長は思い掛けず俺の知らない晴陽を知っていた。

会長は晴陽はもう俺のものだと釘を刺しながら、俺の胸もさくさくえぐる。
その言葉の一つ一つを検証してみれば、悔しいけれど確かに会長の言うとおりなのだけれど。


晴陽と初めて会ったのは俺たちがまだ幼稚園児の頃で、実は、はっきりとは覚えていない。
専業農家で地主の晴陽の家の隣の空き家をうちが借りたのがきっかけで、俺たちは出会った。

子供の頃の俺たちは近所でも神童だと有名で、何をするのも一緒だった。
ただ、晴陽は唯一運動だけは苦手で、だけどそれ以外のことはなんでも難無くやってのけた。


だから俺は忘れていた。
晴陽が今まで俺にしてくれていたことを。

毎朝、登校する前に道場に寄る俺に、晴陽はいつもお手製の朝食を届けてくれていた。
こちらに来てからは昼食の弁当も用意してくれて、俺はそれを毎日、当たり前のように食べていた。

その役割を恋人である蓮が担うようになって、不器用なくせに俺のために苦手な料理までしてくれる、その一生懸命さが嬉しかった。
少し焦げ付いたおかずや微妙な味付けも、そんな一生懸命さの結果だと思うと愛しさも募った。

けれどよくよく考えてみれば、それは晴陽も同じだった。
特に晴陽は栄養バランスも考えて、中学の頃から何年にも渡って俺のために用意してくれていたのだ。

『晴陽には礼を言っていたのか』

会長にそう聞かれ、不意にそう言えば最近は当たり前になってしまっていたことに気がついた。


Bkmする
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