俺様キューピッド
俺様キューピッド

[36/96]

会長が僕に協力してくれてるんだから、僕も何かお返しをしなきゃおかしいよね。
僕に何ができるのかは僕にはわからないけど、できるだけのことはしてあげたい。

してあげたいとかっておこがましいかな。
だけど、僕はそう思うんだ。


最近、一つ気付いたことがある。
それは、こうやって土いじりをしていると前向きな気持ちになってくるってこと。

始めるまではマイナス思考でうじうじ考えているのに、こうやって草花の世話をしていればいつの間にか前向きな、ポジティブな思考になってくる。

吹き出る汗を手の甲で拭って空を見上げると、眩しい陽射しに目眩がした。
秋に入って二日目の今日も、秋の気配はまるでしない。

それからは黙々と作業をこなして、ふと気付いた時にはいい時間になっていた。
作業を始めたのはお昼すぎ。
今は中庭テラスの柱時計の針がちょうど、おやつの時間の3時を指している。

慌てて後片付けを始めたら、

「お疲れ様。後片付けが終わったらお茶にしない?」

不意に頭上から優しい声がした。



「副会長」

振り向いたら背後にとても綺麗な人が立っていて、

「この花壇、井上くんが手入れしてたんだ」

いつも手入れが行き届いてるなって感心してたんだよと笑いながら、視線で中庭テラスの隅の白いテーブルの上を示す。
テーブルは薔薇のアーチの庭園の方と隣接してるから、この花壇は死角でテーブルからは見えないはずなのに。

「僕も手伝おうか?」
「め、め、滅相もないですっ!」

慌てて道具を用務員室へ戻して、呼ばれるままにテーブルに座った。


テーブルは薔薇のアーチの真正面にあって、テラスの天井もあるから日陰になっている。
炎天下の花壇とは温度差も何度かあるように涼しくて、実際そうなんだろうと思う。

「よかった。ちょうどおやつの時間だね」

副会長はそう言って、僕のために紅茶を淹れてくれた。

「アールグレイでいい?」
「あ、はい」

アールグレイはベルガモットの油を使った紅茶で、副会長はその香りがとても好きだと言った。
その様子がなんだか英国貴族のようで、会長やその他の生徒会メンバーにはなんとか慣れたけど、やっぱり副会長だけは雲の上のひとって感覚がなかなか拭えない。

それは副会長が、僕の周りにいない王子様タイプの人だからなのかも。

Bkmする
前へ | 次へ ]

36/114ページ
PageList | List | TopPage ]

Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved.
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -