俺様キューピッド
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恋人ごっこ


「なあ、晴陽。同性愛ってどう思う?」

全ての始まりは、龍平がぼそっと零したそんな一言だった。
ちなみに、龍平は僕の幼なじみで、僕の一番好きな人。

「あ、えっと。いいと思うよ」
「ほんとか?!」
「うん。恋することに性別なんか関係ないよ」
「…キモくねえ?」
「うん。だって、うちの学校では普通のことだし」

僕らが通う高校は全寮制の男子校で、同性愛は呼吸をするのと同じくらい自然なことだ。
それは僕が子供の頃から側にいた龍平を好きになったのと同じことで、だから龍平からそう言われても僕は全く動揺しなかった。

むしろ、完全にノーマルだと思っていた龍平がそんなことを言い出したことに戸惑いと驚きが隠せない。
龍平は「そうか」とホッとした顔をして、それから真剣な顔で僕のことを見つめてくる。

「晴陽、俺……」

じっとこちらを見る龍平の瞳が初めて見るものだからか、心拍数が悪戯に跳ね上がった。

こ、この展開はもしかして……、もしかするのかな。

僕に向かって伸ばされた龍平の腕が僕の両肩を掴み、緊張のあまり、こきゅっと音をたてて息を飲み込んだ瞬間、

「…彼氏ってゆーか恋人ができた」

そう言われて、

「え」

一瞬、息が止まった。







俺様キューピッド

地面からにょっきり生える入道雲を背負って、流れ落ちる額の汗を手の甲で拭う。
それは夏休み最後の日。
四国の実家から寮へ戻る日の朝のことだ。
僕の初恋は誰にも知られないまま、なんとも呆気なく終わってしまった。

「…暑いな」
「うん」

まあ……、ね。
僕は龍平にとって単なる幼なじみに過ぎないことはわかり切ってたことだけど。
去年の今頃、急に東京の全寮制の男子校を受験すると言い出した龍平を追ってここまで来たのに、それも全てが無駄になってしまった。

「まだあいつから聞いてねえ?」
「うん」

頭を掻きながら「早まったかな」と苦笑う龍平の目を見ることができない。
龍平の恋人の春川くんは僕と同室のクラスメートで、寮に戻ってから彼にそのことを報告されるんだろう。

実家を出てからおよそ半日後。
バス停から寮に向かって真っすぐ続く一本道を龍平と並んで歩きながら、僕はぎゅっと両手をきつく握りしめた。

Bkmする
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