俺様キューピッド
俺様キューピッド

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こういう時って背が低いと損だ。
背の順でも出席番号順でもなく、早い者順で整列するといつもこんなことになる。

「前、見えないね」
「うん」

僕らはまだ16歳。
成長期だから、まだまだ背は伸びてくれるとは思うけど、少し背伸びしても壇上に立った人の頭のてっぺんしか見えなくて、同じく背の低い春川くんと二人で笑い合って顔を見合わせた。

僕と春川くんの身長は全く同じで、160センチと少ししかない。同じ16歳でも龍平は180センチもあって、一年生の中でも背が高い方だ。

やっぱり成長に運動は不可欠なのかな。
運動オンチの僕と比べれば、龍平は運動量もまるで違う。

龍平は生徒会に入っても暇を見つけては竹刀を振ったり、サッカーやバスケットボールに興じたりして何かしら運動してるし。


「あ」

始業式が始まって少しした頃、不意にポケットに入れてあった携帯電話が震えだした。

誰だろ。
友達はといえば龍平と春川くんぐらいのもので、滅多にメールも通話も着信はない。

このバイブのパターンはメール着信時に設定したパターンのもので、どうやらメールを着信したみたいだ。
ちょうど、生徒会からのお知らせと称したお話をしている時だった。
板垣くんが生徒会の任命式を執り行う旨を伝える。

『――新しく生徒会の補佐役に、1年B組の井上晴陽くんを任命します。井上くん、前へ……』
「え」

メールを開いて内容を確認したと同時に、僕はメールの差し出し人である会長に壇上へ呼ばれた。


「ちょ。ハルっち、やったじゃん!」

早く早くと春川くんに追い立てられるように、よろよろと壇上へと歩み寄る。
昨日までは誰も知らなかったであろう、今は学校中に知れ渡ってしまった名前を呼ばれて、みんなが僕に注目していた。

ざわめきが痛い。
ひそひそ声が耳に入って来る。
その一つ一つに平凡だとか地味だとかのキーワードが含まれていて、思わず目眩を起こしそうになった。


会長は壇上に上がる直前に、メールを送信したんだろう。
着信メールは会長からのもので、生徒会の補佐役に僕を任命する旨を伝える短いものだった。

会長から初めてもらったメールがこれって……、とか、ちょっとがっかりしてたりもして。

Bkmする
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