俺様キューピッド
俺様キューピッド

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そもそも校内のゴシップ新聞でスクープされるのは誰と誰がくっついたかの恋ばなばかりで、男子校だけに『校内でカップル成立』となれば当然そ、のカップルは男同士だ。
おまけに先生と生徒がくっついても問題になるどころか祝福されるし、先生同士がくっついたのがスクープされたこともある。

自由な校風といっても自由すぎるだろってツッコミたくなるくらい、それ(男同士の恋愛)は当たり前になっていた。
自分が嘘っことはいえど当事者になって、ちょっとだけ戸惑っているけどね。

そんなことを考えているうちに、ホームルームは終わってしまった。

「ハルっち。体育館、一緒に行こ」

あんなことがあったのに僕に声を掛けてくれるのはいつものように春川くんだけで、みんなは遠巻きにこそこそやっている。

うん。まあ、そうだろうね。

多分、みんな聞きたいことはいろいろあるんだろうけど、こんな平々凡々な僕が会長の恋人だとか、急には信じられないだろうし。
僕が春川くんみたく可愛かったりしたら嫉妬もされるんだろうけど、こんな僕に嫉妬するひともいないだろうしね。

「ハルっち、早く早く!始業式に遅れるよ」
「わわ、ちょっと待って!」

移動中の廊下でも相変わらず、誰も僕を見てはいなかった。
いつものように注目されてるのは春川くんだけで、わたわたと春川くんの後を追う。


渡り廊下から見上げた空は青く澄み渡り、小さな雲一つ見当たらない。
昨日の雷を不意に思い出して、なぜだか胸がきゅんとなった。

龍平に失恋した痛みだけじゃない、なんていうのかな。
甘い疼きも伴った何か。

その感情がなんなのかいくら考えてもわからなかった。

「はあ、なんとか間に合ったね。ハルっち大丈夫?」
「う、ん。だいじょぶ」

情けないことに少し駆け足しただけで息が上がった。
肩で息をしながら乱れる呼吸をなんとか整えて、1年B組の最後尾に並ぶ。

『―ただ今から……』

それから何分もしないうちに、議長の板垣くんの司会で二学期の始業式が始まった。

Bkmする
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