さよならルーレット（創作BL小説サイト）

俺様キューピッド
俺様キューピッド

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「え、これ……」
「すごいよ。ハルっちってば。これ号外だって！」

そう言って手渡された号外だという新聞は確かにまだ刷り上がったばかりみたいで、独特のインクのにおいがつんと鼻につく。

「へへへ。ちなみに今月の新聞はこれなんだけどね」

そう言って照れ笑った春川くんに手渡された本来の新聞では、一面で生徒会書記の龍平と補佐役の春川くんが夏休みの間にくっついたことが報じられていた。

問題はこっち。
号外だという新聞は、多分昨夜のうちに慌てて刷られたんだろう。
きっと会長が報道部に直接連絡を入れたんだと思うんだけど、大々的な『三鷹会長に恋人が!!!!』の見出しが目を引く。
今まで会長には特定の恋人がいなかっただけに、どうやら大変なニュースになっちゃったみたいだ。

それは『！』（びっくりマーク）の多さでもわかるんだけど、なんだか他人事のようで、春川くんは手放しで喜んでいるけど、この記事の内容じゃ……、ね。

当然記事には会長の恋人である僕のことも書かれてるんだけど、その内容はこうだ。

『問題のお相手は１年Ｂ組の井上晴陽。美化委員に所属』

趣味は読書だとか一通り調べられることは全て調べてあるみたいだけど、僕の写真は掲載されていない。
おまけに僕に関する資料もほとんどなかったようで、僕に関する情報は５行で終わってしまっていた。

まあクラスメートは一応『井上晴陽』が誰だかわかってるから、あちこちでこそこそやっている。
なかにはこちらをちらちら見ながら「井上ってあいつだっけ？」とか言い合っているクラスメートもいて、自分の影の薄さを実感してしまった。

そもそも僕は学校でも人気者の龍平や春川くんの友達で、よく一緒にいるのに平凡すぎるからか注目されることはない。
１年Ｂ組の井上晴陽が会長の恋人だって知れ渡ることにはなったけど、多分みんな１年Ｂ組の井上晴陽が僕だってことは知らない。

その証拠に、教室に入るまでは全く注目されなかった。
大きなバケツに入ったガーデニングの道具を持って移動している時も、もちろんこの教室への移動中も。

僕の顔と名前が一致しないから、もしかしたらこのまま大人しく過ごしていたら今まで通りに平穏無事に過ごせるかも。

Bkmする

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