俺様キューピッド
俺様キューピッド

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時刻はまだ7時を少し過ぎたところで、朝のホームルームの時間までには余裕がある。
花壇に着いてまずは水やりをして、それから軍手をして本格的な作業を始めた。

中庭に隣接する校舎の隅っこにあるこの花壇は、渡り廊下からもよく見える。
ただ、中庭はプロの庭師さんが造園した立派な薔薇のアーチをあしらった薔薇の庭園でもあって、僕の花壇よりもそちらの方が目を引いた。

高等部はこんな風に、学園エリアもお金持ちのエリートと一般庶民のものが共存している。
普通ならお金持ちでエリートの生徒が一般庶民を馬鹿にしそうなものだけど、生徒数も同じのこの二つのグループは成績が全てで敵対することもなく、比較的平和な交流が持たれていた。

「次の休みにフラワーガーデンに行ってみようかな」

そう独りごちながら肥糧をやる。
植え替え作業は、ほとんど一日掛かるから次の休みの日にでもやってしまおう。

ちなみにフラワーガーデンは学園から一番近い繁華街にあるホームセンターの造園コーナーの名前で、実際に自分の目で見て買いたいからネットや造園雑誌の通販よりもこちらを優先的に利用している。

土をいじっているとなんでかな。すごく安心するんだ。
何より土は温かいし、自分の手で綺麗な花が咲くのを見るのも楽しくて、春の草花は種から育てるのが基本だけど、夏や秋のものは既に花が咲いたものや蕾の状態の苗を楽しむこともある。
できるだけ冬までは花を途切れさせたくはないから、いくつかは花の咲いた苗も買って来よう。

「こっちはもうすぐかな」

秋の花壇の主役になるのはコスモスだろうけど、僕が一番好きなのはこれ。
種から育てたダリアという花で、ダリアのなかでもこのポンポンダリアと呼ばれる種類のものは丸い可愛い花を咲かせる。
そのなかでも黄色の花が大好きで、この子は黄色い花を咲かせるはずだ。
山の中腹という場所柄、少し成長が遅れてるけど、もうすぐ可愛く咲いてくれるはず。
※注釈


なんと言うのかな。可憐で綺麗なコスモスが春川くんで、この丸いダリアは僕って感じがする。

コスモスの和名は『秋桜』。
秋の桜と書いてコスモスで、その名前のとおりみんなの人気者。
ダリアは和名を天竺牡丹(てんじくぼたん)といって、天竺からやってきた牡丹って意味。

天竺とはインドのことで、外部からやって来た目立たないよそ者の僕にはぴったりだ。

Bkmする
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