俺様キューピッド
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ミタカくんの恋人


――翌朝。

「…ん」

…あーあ。
やっぱこの時間に起きちゃうか。

どうやらすっかり身についた生活サイクルは、そうそう簡単には変えられないみたいだ。
寝る前にセットした目覚まし時計のアラームは7時ちょうど。まだ一時間は余裕がある。

もう早起きする必要もないのにな。
僕の代わりに春川くんがいるから。
僕の代わりなんておこがましいけど、僕が今までやっていたことはもう春川くんの役目なのに。

『あ、そうだ。ハルっち。龍平の朝食とお弁当は僕が用意するからね』
『え』

まあ、普通に考えたらそうなるよね。
春川くんは、旦那の体調管理は嫁の勤めだとばかりに張り切っている。

僕が悠長(ゆうちょう)に実家でごろごろしてた頃、その役目は僕の知らないところで僕から春川くんへと選手交代してしまった。

枕に顔を埋めて目を閉じてみたけど、もう一度眠ることはできないみたいだ。
僕は夜が弱い代わりに朝はめっぽう強い。
朝からぱっちり目が覚めちゃって、仕方ないからごろんと寝返りをうって仰向いた。


春川くんはまだ上手に料理できないから、恐らくはレストランのお持ち帰りメニューを利用するんだろう。
学食もレストランも基本的には朝の6時から夜の10時まで営業していて、お弁当のようなお持ち帰りメニューも用意されている。

今までは僕が自分のお弁当を作るついでに、龍平の朝食用と昼食用のお弁当を用意していた。
ってゆーか、どちらかと言えば龍平のお弁当の方がメインだったけど。

龍平の実家は剣道場の登坂龍昇会館で、龍平自身も子供の頃から剣道をやっている。
朝は6時過ぎから体育館に隣接する道場で一汗流して、それから生徒会へ顔を出してから自分の教室へ向かう。

その道場へ毎朝、朝食とお弁当を届けるのが日課だった。
龍平に恋人ができると、そんな日常まで変わってしまうんだ。
当たり前のことかも知れないけど、とても胸が痛かった。


仕方ない。ちょっと早いけど起きてしまおう。
自分の分だけの朝食とお弁当の用意なんて、一時間も掛からないけど。

龍平にお弁当を届けてから花壇に向かうのが僕の日課だった。
少し早いけど早めに花壇に行って、いつもより念入りに土いじりしようかな。

大好きだった幼なじみに手を掛けられなくなった分、僕は花壇に愛情を掛けるしかないみたいだし。

Bkmする
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