俺様キューピッド
俺様キューピッド
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※三鷹SIDE
これでよかったんだろうか。
自分が起こした行動に自問自答するのは本当に久しぶりだ。
自室へ帰る道すがら、ずっとそればかりを考えていた。
三歩ほど後ろを着いてくる登坂の存在をこちらは微塵も気にしていないが、あちらはなんとも複雑な心境だろう。
自分の幼なじみが俺と付き合い始めるとか、しかも自分に男の恋人ができたとその幼なじみにカミングアウトしたその日に。
もっと悩めばいい。
一番身近にいた存在がどんなに大切な存在だったか、じわりじわりと思い知ればいい。
晴陽には協力すると言ったが、俺の目的はそれだけだ。
その後にどうするかは晴陽の気持ち一つであって、俺の一存ではどうすることもできない。
新入生の中に晴陽と登坂の名前を見つけた時から、俺はどうにか晴陽とコンタクトを取りたかった。
控えめなあいつの性格をよく知っているし、それだけに今回のことは願ってもない機会だった。
二人が俺を覚えていないだろうこと、特に晴陽が俺を覚えていないだろうことも覚悟していたことで想定の範囲内だから、取り立ててどうこういったこともない。
ただ、晴陽が日の目を見ないことだけが気に掛かった。
晴陽が入学してからこちら、各種資料を見る限りは晴陽の成績も素行も申し分ない。
表舞台に立ってもいいような人間なのに、その控えめな性格が邪魔をする。
はたして表舞台に出していいものか、それが晴陽のためなのかと自問自答もするが、生徒会長の立場から言わせてもらえば、晴陽のような人材はこの学園にとっても有益を成す。
ただ、その後のことを思えば個人的にあれで、学園の風潮、その他を考慮した上での独占欲が沸いた。
晴陽と接触した人間がどうなるのか、容易に想像できるからだ。
ただ協力するだけじゃなく虚偽の恋人契約を持ち掛けたのも、少なからず晴陽が俺のものだとしらしめたい思いもあったのかも知れない。
もちろん表舞台に出て来た晴陽の身を守ることが一番の理由だが、そのことも否めないだろう。
まあ、個人的な思惑はこれぐらいにしておいて、とにかく早急に事を起こさねば。
「もしもし。三鷹です」
登坂と別れて自室に戻ったところで、早速上層部へ連絡を入れた。
それにしても晴陽の泣いた顔、昔と同じで可愛かったな……。
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