俺様キューピッド
俺様キューピッド
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それから僕と春川くんは順番にお風呂に入って、それぞれの部屋で眠りについた。
朝からいろいろあり過ぎて、疲れ切った体をベッドに沈める。
8月31日。
夏休み最終日。
明日から9月で新学期が始まる。
ベッドに仰向いて天井を眺めたら、不意に僕は今日失恋したんだと実感してしまった。
なのに不思議と涙は出なくて、花壇とテラスのベンチでいっぱい泣いたからかな。
会長がいてくれて良かった。
僕一人で二人と向き合っていたら、絶対泣いてたし二人を祝福もしてあげられなかった。
会長は協力すると言ってくれたけど、そんな幸せそうな二人を見ていたら胸が痛くって、そんな二人の間に割り込むこともできそうもない。
その会長の協力っていうのがどんなものなのかはわからないけど、少なくともただの幼なじみである僕を龍平が急に好きになることもないだろうから。
それでもせっかく会長がそう言ってくれたんだから、会長を拒絶するのも悪い気がした。
…違うな。
返事は『はい』か『イエス』かのどっちかしかないんだっけ。
ふと、あのやり取りを思い出して笑ってしまった。
そんな俺様発言なのにとても優しくて、本当に会長は不思議な人だ。
ああ、もう無理。
起きていられない。
凄まじいまでの睡魔に襲われて、
「…あふっ」
欠伸(あくび)という名前の深い吐息を一つ。
このまま目が覚めたら、今日あったこと全てが夢だったらいいのに。
もちろんそんなファンタジーな展開はなく、僕の生活は一変することになるんだけれど。
そんなこんなで今年の夏は、平穏な日々と僕の初恋ともに終わりを告げた。
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