俺様キューピッド
俺様キューピッド
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『…――――』
「…うん。うん。そうみたい」
春川くんは今、龍平と電話をしながらとても優しい顔をしている。
会長は、僕と会長が付き合い始めたとなれば龍平が嫉妬するだろうとそう言っていた。
会長は俺が登坂との仲を取り持ってやるよと言ってくれたけど、春川くんのこんな嬉しそうな顔を見てたら春川くんから龍平を取ることなんかできるわけがない。
「龍平、部屋が片付いたらこっちに来るって」
春川くんは嬉しそうに笑いながらそう言って、
「そうだ。お祝いの準備をしなきゃ」
と、キッチンへと向かった。
春川くんは生徒会の執行部の補佐をしてるんだけど、それは中等部の頃からなんだそうだ。
春川くんが中等部の頃の生徒会長も三鷹先輩だったんだけど、その三鷹先輩の推薦で生徒会入りしたのが春川くんだ。
そのいきさつはうちの学校ならではで、春川くんのお父さんは全国各地、津々浦々にチェーン店を持つ新鋭パスタ店の創設者であり社長で、春川くんが中二の頃に両親がハワイへ支店を出すために渡米してしまい、一人残された春川くんはうちの学園に転入してきたというわけだ。
うちの学園には一目でわかる不良はいないかわりに、秘密裏に犯した犯罪まがいの悪事を金にものを言わせて揉み消す生徒は多い。
そんなこともあって母方の叔父さんである理事長の忠告で平凡くんに変装していた春川くんだったけど、その可愛さは野暮ったいマリモのウイッグや分厚いレンズの伊達眼鏡で隠しきれるものじゃなかった。
素顔がばれてしまった春川くんは未遂だったけどレイプまがいに襲われたことがあって、会長の声が掛かったんだそうだ。
生徒会の後ろ盾があると安心だし、それからは学園の姫だと称されて一般生徒からすれば雲上人になって今に至っている。
今まで本当にいろいろあって今は幸せそうだけど、辛い思いをしたことを知ってるから、春川くんには幸せになってもらいたい。
だけど、できれば龍平以外の人とそうなって欲しかった。
「春川くん。大丈夫?」
と、ここでそういえば春川くんがキッチンに立っていることを思い出して、慌ててキッチンに向かう。
春川くんは料理を覚えたてで、まだ上手にはできないはずだ。
「大丈夫だよー。ハルっちはあっち行ってて…っっ、いったあ!」
そしたら案の定、小さな悲鳴が聞こえてきて、僕は慌ててキッチンに駆け込んだ。
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