俺様キューピッド
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恋人ごっこ

「えっと、そういうことで、お付き合いすることになりました」

あれから僕は会長に寮の部屋まで送ってもらって、二人の共同スペースのリビングで春川くんとソファーに座っています。

ちなみにお付き合いの報告をしたのが僕で、テレビの前に隣り合わせに座って、

「うそ……」

そう呟いたのが春川くん。
春川くんは目を真ん丸にして、とても驚いた顔をしている。

うんうん。
そうだろうね。
僕もまだ自分のことなのに信じられないもん。
それでも次の瞬間、

「きゃー。ハルっち、おめでとう!」

そう叫びながら、春川くんは僕に抱き着いてきた。


「わっ、わわっ」

バランスを崩した僕にはお構いなしに、

「二人いっぺんに彼氏ができるなんてすごいよね」

今日はお祝いしようよって、春川くんは携帯電話に手を伸ばす。

「あ。もしもし龍平?」

春川くん……、夏休み前まで龍平のこと登坂くんって名字で呼んでたのに。
名前で呼べるの、幼なじみである僕の特権だったのに。

二人は僕が実家でのんびりしてる間に、夏休みの生徒会で急接近したそうだ。
ちなみに告白したのは龍平の方。
無邪気で真っすぐで嘘をつけない春川くんを放っておけないって、そう言ったんだそうだ。

僕とは正反対な春川くん。
僕は自分の思ってることの半分も言えない。

『おめでとう。よかったね』

いつも口から出るのは反対のこと。
体育の授業中、二人三脚をして春川くんと二人でこけた時も、

『僕は大丈夫だから、春川くんを見てあげて』

強がりとかツンデレとはまた違うかな。
ぶりっ子でもない。
けど、思わずそう言ってしまうんだ。



「ハル。そんなに怖がるな。大丈夫、恋人ごっこだから」

実は会長から告白された後、僕はまた会長に頭を撫でなられながらそんなことを言われた。

「恋人ごっこ?」
「そう。ハル、まだ登坂のことが好きなんだろう?」
「あ……」

一瞬だけ恋人ごっこと言われて残念に思ったけど、そう言われて僕はホッとした。
つまり、僕と会長のお付き合いは、実はカモフラージュで偽者の恋人同士だったりする。

Bkmする
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