俺様キューピッド
ぽっちゃりキューピッド
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結局は半日丸々を居眠りしたり、ぼんやりして過ごした。
そのうちどうやらフランスに着いたようで、フランス語による機内アナウンスがそれを教えてくれる。
日本を発つ前にお祖父ちゃんの家には電話を入れたけど、中途半端な時期にも関わらず、僕が行くことを歓迎してくれた。
いつ着くのかとお祖母ちゃんに聞かれ、お祖母ちゃんは僕が好きなフランスの家庭料理を用意してくれているようだった。
『ご搭乗ありがとうございました。当機は……』
出来れば、普通のテンションの時に来たかったな。
お祖父ちゃん、お祖母ちゃんの前でちゃんと笑えるかな。
龍平が落ち込んでいるから自分もだなんて、龍平からしてもはた迷惑だよね。
大好きな龍平と両思いになれたのに、ハルっちが会長と付き合い始めてからは明らかに龍平の様子はおかしかった。
龍平のことは信じてるし大丈夫だとは思うけど、どこかで不安に思う自分もいて。
飛行機を下りて胸いてぱいに空気を吸い込むと、いつもと違う感覚にフランスにいることを実感させられた。
ゲートを抜けて歩いていると、
『蓮!』
僕の名前を呼ぶ声がした。
『お祖父ちゃん、お祖母ちゃん!わざわざ迎えに来てくれたの?』
二人の姿を見つけてホッとする。
『当たり前じゃない。私の可愛い孫ですもの』
お祖母ちゃんはそう言って、何度も頬にキスしてくれた。
フランス人のわりに、お祖父ちゃんもお祖母ちゃんもそんなに背が高くない。
それは僕のお母さんやお父さんにも言えて、だから僕は人より少し小柄なんだろう。
そう言えば、僕ってハルっちと全く同じ身長なんだよね。
そんで龍平は会長と同じぐらいかな。
このことも龍平とハルっちのことで不安になる材料の一つだけど、大丈夫。
きっと大丈夫。
お祖父ちゃんの運転で家まで向かう道すがら、今度はずっと心の中にそう言い聞かせた。
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