俺様キューピッド
ぽっちゃりキューピッド

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会長が補佐役に任命してくれたことで、僕は前みたいに嫌われずに済んだ。
会長は僕のどこがいけないかも丁寧に説明してくれて、自分しか見えてなかった僕もちゃんと周りが見えるようになったのに。

『ハルっち!よかったね』

だから、ハルっちが会長と付き合うようになった時も、本当に嬉しくて仕方なかったんだ。
ちょうど僕も龍平と付き合い始めた頃だったから、自分のことのように嬉しくて。

だけど……。

その陰で、一番大切な人が苦しんでいたことに気付けなかった。
…苦しんではいないかな。

戸惑ってた?
悩んでた?

とにかく、心の中で揺れ動いていたことに。

『龍平、聞いてよ!ハルっちに彼氏ができたんだって!』
『――!!』

ハルっちは、僕にとっても龍平にとっても大事な人だ。

『だからお祝いしようと思って』

僕は、また自分勝手な無邪気さで一番大切な人を苦しめてしまった。

『…龍平?』
『ごめん』

気付いた時には遅すぎた。
付き合い始めたばかりの僕の恋人は、ハルっちが幸せそうに笑うたびに、笑顔が少しずつ減って行った。



『ご乗車ありがとうございます。当機は羽田発――』

わかってた。
ハルっちが龍平にとって、大切な幼なじみだってことは。

だからこそ本当に嬉しくてお祝いもしてあげたかったのに、龍平は何故か困惑してるみたいだった。
今になってはわかるんだけど、その時の僕は気付けなかった。


龍平は自分が同性愛者なのか、単に僕が好きなだけなのか悩んでいた。
僕は気付いた時には女の子より男の子の方が好きだったから、龍平からの告白は本当に嬉しかったんだけど。

自分が同性愛者なのかどうかもわからないまま、幼なじみのハルっちが生徒会長と付き合い始めたという。
うちの学校のことを考えたらそれは自然なことなんだけど、外部入学組の龍平はそりゃ戸惑うよね。

それだけなんだってわかってる。
龍平がちゃんと僕を好いていてくれることも、龍平の真摯な態度からわかるし。

だけど、ハルっちが龍平と距離を置くようになるのと同時に龍平の態度がおかしくなって、だからちょっとだけ不安になった。



窓の向こうの景色がゆっくり動き始めて、僕は仰向いて天井を見つめた。
少し頭を冷やさなきゃ。
もうこれ以上、誰かを巻き込まないように。


Bkmする
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