俺様キューピッド
ぽっちゃりキューピッド
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それぞれの想い
※春川SIDE
「龍平のバカ…」
思わず呟いちゃったけど、自分の方がバカだってちゃんとわかってる。
ついついいつもの癖が出て、一人で暴走して自爆してしまった。
僕には、一つのことに集中しちゃうと周りが見えなくなる癖がある。
だから気付けなかった。
一番、大切で大事な人の気持ちに。
「最近はマシになって来たと思ってたんだけどなあ…」
きっかけは、お父さんが小さな店を始めた日まで遡る。
まだ幼稚園に上がるか上がらないかの子供の頃、うちのお父さんとお母さんは一号店になる小さなパスタ屋さんを始めた。
その頃はまだ僕も店に出入りしていたけど、お店はだんだん忙しくなって行って。
両親からあまり構われなくなった僕は、両親から構ってもらえるようになんでも一生懸命やるようになった。
『蓮、すごいぞ。よくやったな』
お父さんからそう言われるのが嬉しくて、勉強も遊びもなんでも頑張った。
だけど、それと同時に周りが見えなくなって、一生懸命になればなるほど、周りに迷惑もかけるようになった。
最初の頃はそれがわからなくて、僕が頑張れば頑張るほど、それまで仲良くしていた友達が離れて行った。
それから少しずつ、皆から無視されたり、嫌がらせを受けるようになって。
気付いた時にはどうしようもなくて、僕は叔父さんが理事長をしている今の学校に転校をした。
『え?変装するの?』
『ああ。蓮は可愛いからな。狼の群れに入って生活することになるんだから、変装して、ちゃんと自覚を持って行動すること』
それまでの僕は共学校に通っていて、可愛いって自覚はあった(お母さんがフランス人だからね)けど、叔父さんの言ってる意味がわからなかった。
『僕は春川蓮。よろしくね!』
だから、変装だけはちゃんとしたけど、それ以外は普通に振る舞った。
僕の場合はそれが空回りしていて、それが原因で前の学校を転校したのに。
最初の頃はクラスメートに好かれるのに必死で、誰とでもフレンドリーに接した。
けど、それは今になって思えば少し度を越していて、入っちゃいけない領域にまで、僕はずかずか土足で入ってしまっていた。
その結果、変装してるのがばれちゃって、三年生の先輩に襲われた。
『春川、大丈夫か?!』
『…かい、ちょ?』
もうダメだって覚悟を決めた瞬間に会長に助けてもらって、今(現在)に至る。
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