俺様キューピッド
ぽっちゃりキューピッド
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「ふふっ、魔王降臨」
「かいちょ、恐っ!」
「会長の前では僕らも我慢してるのに、ホント、風紀いいんちょってチャレンジャーだよね」
「……」
「か、会長落ち着いて!」
皆が口々にそう言うなか、僕は会長に引き剥がされた。
た、助かった…けど、会長、ホント恐いよ?
頬をくすぐる柔らかな髪の感触や甘い香りがなくなってホッとするも、岳先輩の胸の中から見上げた先輩のこめかみには、絵に描いたような怒りマークがしっかりと浮かんでいた。
そんなちょっとした前フリがありつつ、遅刻した僕のせいで、少し遅れて生徒会と風紀委員の合同会議は始まった。
議題は一ヶ月後に迫った文化祭についてで、僕たちの学校は、こういった大きな行事は生徒会と風紀委員の合同で取り仕切ることになっている。
普通、一般的に私立の進学校の文化祭は三年生の受験を考慮して、比較的行事の少ない5月か6月頃に開催するみたいだけど、僕らの学校ではその頃は学校よりも寮生活に関する行事が多く、必然的に9月に開催することになっている。
基本的には一年生と二年生が中心になって準備をするのは僕らの学校の習わしで、三年生の先輩たちも、この時期ばかりは息抜きだと喜んで参加してくれるんだそうだ。
ちなみに、文化祭が終わったらすぐに体育祭も待っている。
そもそも僕らの学校には家柄が良くて将来を約束された生徒が多くて、この時期には進路が決まっている人も多い。
海外の有名大学に進学したり、卒業してすぐ親の仕事を継ぐ人もいて、そう言った人も含めてこの期間だけは、ほぼ全員参加になるんだそうだ。
「生徒会からは以上です。風紀委員から何か質問はありますか?」
普段は無口な板垣くんの進行で、会議は問題なく進んでいく。
会長と風紀委員長の東雲先輩もこの時ばかりは、真摯な姿勢で会議に臨んでいる。
そんななか、生徒会側にぽつんぽつんと空席が二つ。
その席は一つは春川くんの席で、もう一つは龍平の席だ。
『えっ。龍平…じゃなくて登坂くん、来てないんですか?』
『登坂なら迎えに行ったよ』
『…迎えに?』
『ああ』
事もなげに、でも意味深に岳先輩は言った。
フランスに帰国する程、病状が思わしくない春川くんのお母さんのことを思って胸が痛んでいた僕は、先輩のその一言に、首を傾げた。
今日一日で、病状が悪い方から良い方に回復したんだろうか。
と言うか、フランスへのフライト時間って何時間だっけ?
春川くんは飛び乗った飛行機の中でそれを聞いて、龍平に連絡したんだろうか。
飛行機の中で携帯電話は使えないし、多分、連絡を取ることはできない。
だとしたら、春川くんのお母さんの家族から龍平に回復の一報が届き、この時間ならまだ機内にいる春川くんを追った龍平はその後の便に乗って迎えに行ったことになるけど…。
それにしても、数時間の間にこれだけのことが起きるのって、ちょっと変じゃないだろうか。
春川くんを迎えに行くも何も、お母さんがもう大丈夫だとなったら、お母さんを見舞った後、ほとぼりが覚めたら自分から帰って来るよね。
迎えに行くって…もしかして。
二人の間に、何かがあったのかな。
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