俺様キューピッド
ぽっちゃりキューピッド
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好きになった人と両思いになったこと、キスしたこと。
他にも岳先輩とは、初めてのことばかりをたくさん経験してしまった。
だから、どう対応したらいいのか……、
「どうしたの。百面相なんかしちゃって」
「わ、わっ!」
顔を上げたらいつの間にか葉先輩の顔が目の前にあって、思わずその場で尻餅をついてしまった。
「…ふふっ。大丈夫?」
「あ、はいっ。すみません。ありがとうございます」
先輩は右手をそっと僕の方に差し出してくれて、僕はその手をとって先輩に起こしてもらった。
ど、どうしよ。
恥ずかしいところを見られちゃった。
葉先輩は、肩を小さく揺らしてくすくす笑っている。
「…あ。す、すみません。先輩の手に泥がついちゃった」
「ん……、ああ。大丈夫。気にしないで。すぐ洗うから」
それから『ハルくんもそろそろ教室に行かなきゃね』と笑う先輩に手伝ってもらって、用具を片付けてから一緒に教室に向かった。
今日はとてもいいお天気で、陽射しはとても暖かい。
これから少しずつ肌寒くなって、冬になるとか信じられないくらいだ。
葉先輩と渡り廊下を一緒に歩いていると、前は擦れ違いざまに二度見されたけど。
最近は僕も生徒会役員の一人だと認めてもらえたのか、背後でひそひそ話されることはなくなった。
「そう言えばさ」
「あ、はい」
「岳と上手くいったんだって?」
「―――っっ」
少しの間無口だった葉先輩から不意にそう聞かれて、思わず言葉に詰まってしまった。
相談に乗ってもらったお礼を言おうと思ったけど、先輩から急にその話題を振られたからか恥ずかしさで顔が熱くなる。
「…しちゃった?」
とか、葉先輩が聞くから。
この時の僕は葉先輩が聞いてきた『しちゃった』が、単にキスをしただけじゃないことに気がつかなかった。
暖かい陽射しに思わず小さな欠伸を一つ。
葉先輩はそんな僕を見て、くすくす笑っている。
それから数分もしないうちに、一般校舎の下駄箱に着いてしまった。
「じゃあね。また放課後」
「あ、はい。また」
いつもの王子様スマイルで笑った先輩と別れたのは予鈴が鳴る寸前で、そこから少しだけ駆け出した。
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